杏子の浸かる頃

お疲れ様です。私です。

わたしは今年、そのへんでむしり取ってきたあんずを瓶に入れ、毎日せっせとゆすり、あともう少しで飲み頃かななんて思って暮らしております。

瓶には透明の果汁がじゅんわりと出ていて本当に美しい事この上なしなのですが、問題はそんな事よりこの春私が34歳になってしまったという事…

皆様はマッチングアプリ、通称マチアプ、されていますでしょうか。わたしは出来心から2回ほどダウンロードし、してみた事があります。

1回目は数年前、マッチした男が高校生の頃の元彼でした。こんな偶然ってあり⁉️とか思いつつ興味本意で少しメッセージをやりとりしました。

元気で暮らしているか、結婚はしたのか、今何をしているか、そんな上っ面の会話はもうえ〜でと言わんばかりの

"車で迎えに行くし久々会おうや"

私はアプリをスマホの画面割れるギリギリみたいな強さで猛烈に、消しました。

時は我高2(多分)彼と既に出会っていた。
当時いい感じだった男のマンションの1階にあるスケートボードショップの常連だった。

よって家は近く、てか寧ろ近すぎ、普通に遊びに行く関係になっていた。凄くボロボロの、よく言えば実家感満載のお宅によくお邪魔した。

彼には妹がいたが、なんせ家が狭く、2階のひとつの部屋をカーテンで仕切り、そこで暮らしていた。

彼は大阪で1番のスケーターだと自称し、身体はタトゥーだらけだった。理由を聞けば彫り師になるのが夢で今は修行中、だから工場で働いてるねん、手までタトゥー入ってるとなかなか就職はできひんから、と言っていた。

とんでもないクズ男でありながらちゃんと帰宅する時は家まで送り届け、食事は必ず奢り、ヤフオクの支払いはきちんと済ませる、男らしさとクズさの混在する奇妙な人だった。マクドナルドで好きな物何でも頼みやなんて言われたのこの時が初めてで最後だと思う。

ある日彼の家に行ったら、彼の部屋にある指で遊ぶミニチュアのスケートボード(あれ正式名称なんですか?)に、マジックペンで

"ヒデキだいすき"

と書かれていた。その時は見て見ぬふりをし、もう会わないと決心し、本当に2度と会わなかった。

彼も私の記憶が正しければ30代後半。
人って変わらんもんやね(^.^)を実感。

そのほかは、違う元彼も見つけちゃったり(勿論、優しく左したヨ)または違う元彼から見つけたでと直で連絡がくる始末。最悪だよね。哀れすぎん。死んでえ?

そんなこんなで私の出来心は終焉を迎える。

しかし最近また、やってみたい、が湧いてきて、無限左右地獄を開幕してしまうのだ。

まず、システム上私が右スワイプしなくてはマッチしないので、しぶしぶいい部分を見つけて適度に右スワイプした。

すると、失礼ですが数年前このアプリされていませんでしたか?とても印象的な方だったので。とかいうてくる男とマッチしてしまったではないか。はい最悪です。

そいつは私との会話を事細かに覚えており、その記憶の人物が私であるとしっかり判明。
はい最悪です。容赦なくブチりました。

もう1人マッチした人がいた、彼は私の人生にはあまり馴染みのないタイプで、1週間ほど、どうでもいい内容を話し合った。波長の合う人で、なんせ鼻息荒くしているような男達よりも距離感に信頼度が高かったのでやり取りしたが、結果その人も普通に生身の人間であり、その人の求める関係性にわたしはなれないと確信し連絡を絶った。要は勝手に期待して裏切られたと思う面倒なやつになりました。

もちろんアプリも消した。全部消した。

わたしはその夜眠れなかった。
彼のわたし宛の文章、見せてくれたもの、一度きりの会話、全部が頭をぐるぐる駆け巡った。
34年も生きていればこんな事もあるわな。
多分、その人にとってそれは、ほんの一瞬の出来事にすぎない。それも分かった上で、眠れないでいた。

次の日の朝は思いの外に爽やか。
わたしは今日もナイキのモアアップテンポを左足から履き、ぎゅっと靴紐をしめる。
ダメージの効いたスキニージーンズと中国から通販で買ったタンクトップににわたしのダイナマイトボディをギュッと仕舞い込み、颯爽と出かけるのだ。

わたしはしっかりと地面を踏み締め
地球と"共存"をする。

スケボー、メルカリで買おうかな。

いや、そんな事よりあんず用の炭酸水を買わねばならんやろ。

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