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遺族年金のしくみと手続~詳細版|#16社長死亡後の妻の減収を、社長死亡時点で予見できたか?

石渡 登志喜(いしわた・としき)/社会保険労務士・年金アドバイザー

今回は、社長が死亡し、妻が遺族厚生年金を請求した事例です。妻は会社役員を務めており、前年の収入は1,000万円近くありました。しかし、社長の死亡を契機に会社は解散し、妻は役員報酬を得られなくなりました。
この妻は、近い将来(社長死亡時点から概ね5年以内)に収入が年額850万円未満に減収することが推測されます。ただし、遺族年金を受給するには、妻の減収が社長死亡時点で予見できたかどうかが問題となります。実際の妻の申立書等からどのような判断が下されたのか、ご紹介します。 

【事例概要】
死亡者:Aさん(昭和31年7月15日生まれ:66歳)
・X社の社長
・令和4年5月10日に死亡(厚生年金保険の被保険者期間)
・同年6月にX社は解散

請求者:B子さん(昭和33年9月28日生まれ:64歳)
・Aさんの妻で、X社の役員を務める
・X社の解散により、役員を退任
・令和4年9月5日に遺族厚生年金の請求に来所


社長の妻が遺族厚生年金を請求

X社の社長を務めるAさんが死亡したとのことで、妻のB子さんが遺族厚生年金の請求に来所されました。Aさんは現役の社長で、厚生年金保険の被保険者期間中に亡くなりました。

厚生年金保険の被保険者が死亡したとき、遺族に遺族厚生年金が支給されます。遺族が配偶者である場合には、死亡者の死亡の当時、死亡者と生計を同じくしていた配偶者であり、かつ、年額850万円以上の収入を将来にわたって有すると認められる者以外の者であることが、遺族厚生年金の支給要件となります。

【根拠条文等】
・厚年法第58条第1項第1号、第59条第1項、第4項、同法施行令第3条の10
・「生計維持関係等の認定基準及び認定の取扱いについて」(平成23年3月23日年発0323第1号厚生労働省年金局長通知。以下「23年通知」という。)
・「国民年金法等における遺族基礎年金等の生計維持の認定に係る厚生大臣が定める金額について」(平成6年11月9日庁保発第36号社会保険庁運営部長通知)

Aさんが死亡の当時、厚生年金保険の被保険者であったこと、また、請求人であるB子さんがAさんの妻であり、Aさんの死亡当時、Aさんと生計を同一にしていたことは間違いありません。

なお、B子さんはX社の役員を務めており、令和3年分の給与は1,000万円近くありました。一方、X社はAさん死亡の1か月後に解散し、B子さんは役員報酬を得られなくなりました。

そうすると問題となるのは、B子さんがAさん死亡の当時、「年額850万円以上の収入を将来にわたって有すると認められる者以外の者」といえるかどうか、ということになります。

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