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「思想・哲学」関連書のレビュー

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「思想」「哲学」関連のレビューを紹介します。
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2024年2月の記事一覧

岸政彦 『断片的なものの社会学』 : ラノベ的な「ライト学問」

書評:岸政彦『断片的なものの社会学』(朝日出版社・2015年刊) 本書は「紀伊國屋じんぶん大…

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溝口健二監督 『残菊物語』 : 忘れさられた「身分差別」

映画評:溝口健二監督『残菊物語』(1939年) 溝口健二の作品を見るのは、これが3作目なのだ…

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ロベール・ブレッソン 『シネマトグラフ覚書 映画監督のノート』 : 禁欲者の 怖れと…

書評:ロベール・ブレッソン『シネマトグラフ覚書 映画監督のノート』(筑摩書房) フランス…

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スタンリー・キューブリック監督 『2001年宇宙の旅』 : 語りえないものを見せ、解き…

映画評:スタンリー・キューブリック監督『2001年宇宙の旅』(1968年・イギリス・アメリカ合作…

36

伊藤潤一郎 『「誰でもよいあなた」へ 投壜通信』 : 今どきの柔な「哲学書」

書評:伊藤潤一郎『「誰でもよいあなた」へ 投壜通信』(講談社) 本書の著者は、フランスの…

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ジュリアン・デュヴィヴィエ監督 『巴里の空の下セーヌは流れる』 : 永遠なる「花の…

映画評:ジュリアン・デュヴィヴィエ監督『巴里の空の下セーヌは流れる』(1951年・フランス映…

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カート・ヴォネガット・ジュニア 『猫のゆりかご』 : 猫の不在

書評:カート・ヴォネガット・ジュニア『猫のゆりかご』(ハヤカワ文庫) 最初に言っておくと、本作に猫は登場しない。ハインラインの名作『夏への扉』のように、猫好きの期待に応じてくれる作品ではないのだ。 こう書くのも、Amazonのカスタマーレビューで「猫が出てこない」と不満を漏らしていた人がいて、私も読むまでは、猫が出てくる話だと、なんとなくそう思っていたからだ。だが、幸いなことに、私は特に猫好きということではないから、猫を期待して本作を読んだわけではないので、その点で失望した

平尾隆之監督 『映画大好きポンポさん』 : 長いものに巻かれた、 短めの長編アニメ

映画評:平尾隆之監督『映画大好きポンポさん』(2020年) この作品が、映画ファンにウケるの…

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中井英夫論 「眠り男の迷宮・迷宮の夢」 : 『中井英夫全集[12]月蝕領映画館』月報 …

 【旧稿再録:初出は、2006年1月17日刊行『中井英夫全集[12]月蝕領映画館』。2005年後半に…

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中井英夫 『月蝕領映画館』「中井英夫全集12」 : 反世界からの映画批評

書評:『中井英夫全集[12]月蝕領映画館』(創元ライブラリ・2006年) 『月蝕領映画館』は、…

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黒柳徹子 『窓ぎわのトットちゃん』 : トモエ学園の「卒業生」として

書評:黒柳徹子『窓ぎわのトットちゃん』(1981年初刊・1984年講談社文庫) 昨年末に公開され…

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蓮實重彦 『監督 小津安二郎』 : 「説話論的」とは何か?

書評:蓮實重彦『監督 小津安二郎』(ちくま学芸文庫) 私が読んだのは「ちくま学芸文庫」版…

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映画 『オーソン・ウェルズのフェイク』 : あなたに 真贋が見抜けるのか?

映画評:オーソン・ウェルズ監督『オーソン・ウェルズのフェイク』(1973年、イラン・フラン…

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岸本佐知子 『なんらかの事情』 : 常識的思考パターンからの自由

書評:岸本佐知子『なんらかの事情』(ちくま文庫) 2012年刊行の、岸本佐知子の第3エッセイ集である。 私の場合は、第2エッセイ集『ねにもつタイプ』につづく2冊目ということになる。『ねにもつタイプ』があまりに面白かったので、期待はいや増して抑えようもない。 では、結果としてどうだったかというと、相変わらず上手いのだけれど、少々物足りないと感じるものも、無いではなかった。 これは、岸本のエッセイに対する「耐性がついた(馴れ)」とか期待水準の高まり故に相対的に評価が辛くなった