カート・ヴォネガット・ジュニア 『猫のゆりかご』 : 猫の不在
書評:カート・ヴォネガット・ジュニア『猫のゆりかご』(ハヤカワ文庫)
最初に言っておくと、本作に猫は登場しない。ハインラインの名作『夏への扉』のように、猫好きの期待に応じてくれる作品ではないのだ。
こう書くのも、Amazonのカスタマーレビューで「猫が出てこない」と不満を漏らしていた人がいて、私も読むまでは、猫が出てくる話だと、なんとなくそう思っていたからだ。だが、幸いなことに、私は特に猫好きということではないから、猫を期待して本作を読んだわけではないので、その点で失望した