石井裕也監督 『月』 : スッポンと月、 現実と統整的理念
映画評:石井裕也監督『月』(2023年)
本作の原作は、辺見庸の同名小説である。
私は辺見庸という作家が、昔から(2001年の、9.11米国同時多発テロ事件以来)好きだった。何が好きかというと、その誤魔化しや綺麗事を許さない、徹底した本音主義であり、その点において辺見とシンクロしたというのは、間違いのないところである。しかしまた、そんなファンであるからこそ、私は時に、辺見庸に対してさえ「不徹底だ」という注文をつける、そんな読者でもあった。
辺見庸の『月』は、「相模原障害者