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「思想・哲学」関連書のレビュー

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「思想」「哲学」関連のレビューを紹介します。
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2023年7月の記事一覧

フリッツ・ラング監督 『メトロポリス』 : 二つの『メトロポリス』

映画評:フリッツ・ラング監督『メトロポリス』(1926年) あまりにも有名な映画なのだが、な…

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陸秋槎 『ガーンズバック変換』 : ひとしずくの 〈美酒〉

書評:陸秋槎『ガーンズバック変換』(早川書房) たぶん、本書について、日本で最も懇切な「…

22

高橋知也監督 『劇場版 美少女戦士セーラームーンCosmos』 : 「普通の女の子」で い…

映画評:高橋知也監督『劇場版 美少女戦士セーラームーンCosmos』(前後編・2023年) もちろ…

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ベネディクト・アンダーソン 『想像の共同体 ナショナリズムの 起源と流行』 : 「国…

書評:ベネディクト・アンダーソン『増補 想像の共同体 ナショナリズムの起源と流行』(NTT出…

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宮崎駿監督 『君たちはどう生きるか』 : 絵解きとしての〈考察〉 批判

映画評:宮崎駿監督『君たちはどう生きるか』(2023年) 前宣伝を排して公開された、宮崎駿監…

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椎名麟三 『深夜の酒宴・美しい女』 : 転向作家の 「個人的な救い」

書評:椎名麟三『深夜の酒宴・美しい女』(講談社文芸文庫) 椎名麟三に興味を持ったのは、文…

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ウィリアム・フリードキン監督 『エクソシスト』 : 知的劣化版としての 『ヴァチカンのエクソシスト』

映画評:ウィリアム・フリードキン監督『エクソシスト』(1973年・アメリカ映画) & ジュリアス・エイバリー監督『ヴァチカンのエクソシスト』(2023年・アメリカ映画) ジュリアス・エイバリー監督による『ヴァチカンのエクソシスト』は、半世紀前に作られた、ウィリアム・フリードキン監督による名作『エクソシスト』の足下にも及ばない、いかにも「堕落したハリウッド」にふさわしい、「通俗娯楽アクション映画」である。 足下にも及ばないどころか、むしろ、積極的に名作『エクソシスト』を「冒

中野美代子 『中国の妖怪』 : 〈木を見て森を見られない読者〉 には不向きな書。

書評:中野美代子『中国の妖怪』(岩波新書・1983年) 著者が本書で、何について書きたかった…

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荒巻義雄 『小樽湊殺人事件』 : さよなら、荒巻義雄

書評:荒巻義雄『小樽湊殺人事件』(小鳥遊書房) 荒巻義雄は、小説を読み始めた高校生の頃に…

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春日武彦、 平山夢明 『無力感は狂いのはじまり 「狂い」の構造2』 : バランス感覚…

書評:春日武彦、平山夢明『無力感は狂いのはじまり 「狂い」の構造2』(扶桑社新書・2010年…

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『小栗虫太郎ワンダーランド』 : 小栗虫太郎的〈思考〉

書評:紀田順一郎編『小栗虫太郎ワンダーランド』(沖積社・1990年) 本書は、『黒死館殺人事…

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デヴィッド・ロウリー監督 『A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー』 : 死後の魂…

映画評:デヴィッド・ロウリー監督『A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー』(2017年) …

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しまだ 『ママの推しは教祖様 ~家族が新興宗教にハマってハチャメチャになったお話…

書評:しまだ『ママの推しは教祖様 ~家族が新興宗教にハマってハチャメチャになったお話~』(K…

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グレッグ・ベア 『鏖戦/凍月』 : 「SF趣味」とは 〈世俗化した宗教〉 の一種である。

書評:グレッグ・ベア『鏖戦(おうせん)/凍月(いてづき)』(早川書房) タイトルにも書いたとおりで、「SF趣味」というのは、本質的に「宗教的なもの」であるという思いが、最近ますます強くなっている。 本書に収録されたのは、『ハードSFの巨星』と評される、グレッグ・ベアの中編「鏖戦」と「凍月」の2本だが、特に「凍月」の方を読み、さらに山岸真による「解説」を読んで、「やっぱりなあ」と思わざるを得なかった。 「鏖戦」の方は、次のようなお話である(Amazonの同作紹介文から引用)