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「思想・哲学」関連書のレビュー

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「思想」「哲学」関連のレビューを紹介します。
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2022年9月の記事一覧

兵頭喜貴 という男 :映画 『HYODO 八潮秘宝館ラブドール戦記』

映画評:福田光睦監督『HYODO 八潮秘宝館ラブドール戦記』 どこから紹介していいのか迷ってし…

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石牟礼道子 『苦海浄土』 : イタコ作家の秘められた〈実像〉

書評:石牟礼道子『苦海浄土 わが水俣』(講談社文庫) 解説を読んで驚いた。 私は、講談社…

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セルゲイ・ロズニツァ監督 『国葬』 : 驚愕のドキュメンタリー映画

映画評:セルゲイ・ロズニツァ監督『国葬』 こんな映画、初めて観た。当然、こんなドキュメン…

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『柄谷行人 対話篇 2 1984-88』 : 日本社会の 時流の〈外部〉へ

読書ノート:柄谷行人ほか『柄谷行人対話篇 2 1984-88』(講談社文芸文庫) 本書は、柄谷行…

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井口時男 『悪文の初志』 : 〈母子密着的溶融〉への抵抗

書評:井口時男『悪文の初志』(講談社) 「悪文」と聞いて「悪い文章」だとしか考えられない…

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島田裕巳 『中沢新一批判、 あるいは 宗教的テロリズムについて』 : 中沢新一の危険…

書評:島田裕巳『中沢新一批判、あるいは宗教的テロリズムについて』(亜紀書房) 中沢新一の…

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飛浩隆 『ラギッド・ガール 廃園の天使 Ⅱ 』 : 悲劇の〈舞台裏〉

書評:飛浩隆『ラギッド・ガール 廃園の天使Ⅱ』(ハヤカワ文庫) 本作は、「廃園の天使」三部作の2冊目で、単行本は(16年前の)2006年の刊行。完結編となる3冊目の『廃園の天使』は、いまだ連載未完で未刊である。 そんなわけで、読むのを後回しにしてきた「廃園の天使」シリーズの2冊だが、とうとう本冊で、飛浩隆の既刊本をすべて読み尽くしたことになる。一一だが、幸か不幸か、個人的には、本冊が飛浩隆の著作の中では、最も面白かった。 本書は、「夏の硝視体」「ラギッド・ガール」「クロ

中村哲 『アフガニスタンの診療所から』 : 私たちの〈正義〉について

書評:中村哲『アフガニスタンの診療所から』(ちくま文庫) まるで、目の前に刃を突きつけて…

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千葉雅也 『現代思想入門』 : 〈自慢〉できるようになる 入門書の決定版!

書評:千葉雅也『現代思想入門』(講談社現代新書) 本年(2022年)3月に発売されて以来半年…

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タルコフスキーとは、 こういう人。 : 『映像のポエジア 刻印された時間』

書評:アンドレイ・タルコフスキー『映像のポエジア 刻印された時間』(ちくま学芸文庫) 本…

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弱かった人 : 光原百合 『遠い約束』ほか

推理作家の光原百合が、先月24日(2022年8月24日)に亡くなった。 当日の夜に、友人からLAIN…

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橋下徹という〈偶像〉 :松本創『誰が「橋下徹」をつくったか 大阪都構想とメディア…

書評:松本創『誰が「橋下徹」をつくったか 大阪都構想とメディアの迷走』(140B) 橋下徹は…

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映画 『時代革命』 と 『Blue Island 憂鬱之島』 : 香港をめぐる2つの物語

映画評:キウイ・チョウ監督『時代革命』・チャン・ジーウン監督『Blue Island 憂鬱之島』 香…

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大澤真幸、 稲垣久和 『キリスト教と 近代の迷宮』 : 〈馴れ合いなき対談〉 の奇跡

書評:大澤真幸、稲垣久和『キリスト教と近代の迷宮』(春秋社) 博識の社会学者で「無神論者」だとあえて明言する大澤真幸と、キリスト教プロテスタントの信者で、物理学をおさめてから哲学に転じ、今は「公共哲学」というものの必要性を訴えた著書を持つ稲垣久和の対談集である。 本書は、宗教書を多数刊行している春秋社の企画によって実現した、三度の対談をまとめたもので、3回の内容とは、おおよそ次のようなものである。 (1)近代の成立とキリスト教の関係(特に、カルヴァン派との関係) (2)