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「思想・哲学」関連書のレビュー

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「思想」「哲学」関連のレビューを紹介します。
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2022年2月の記事一覧

小川哲 『ユートロニカのこちら側』 : 〈後期クイーン的問題〉の作家・小川哲のユー…

書評:小川哲『ユートロニカのこちら側』(ハヤカワ文庫) 小川哲の作品を読むのは、短編集『…

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角南圭祐 『ヘイトスピーチと対抗報道』 : あなたは〈口だけ人間〉ですか?

書評:角南圭祐 『ヘイトスピーチと対抗報道』(集英社新書) 「書評家」気取りの人、あるい…

8

〈読みやすさ〉とは何か。

書評:マルクス、エンゲルス(北口裕康訳)『高校生でも読める「共産党宣言」』(パルコ) 本…

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出久根達郎『佃島ふたり書房』 : 古き良き〈古本屋めぐり〉の思い出

書評:出久根達郎『佃島ふたり書房』(講談社文庫) これは「古き良き時代の物語」である。 …

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佐藤弘夫 『日本人と神』 : 〈心理的ファクト〉としてのコスモロジー

書評:佐藤弘夫『日本人と神』(講談社現代新書) まさに目からウロコの落ちる、抜群に面白い…

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江藤淳 『成熟と喪失 〝母〟の崩壊』 : 〈我が事〉ゆえの 切実において

書評:江藤淳『成熟と喪失 〝母〟の崩壊』(講談社文芸文庫) 「蟹は甲羅に似せて穴を掘る」…

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スザンナ・キャラハン 『なりすまし  正気と狂気を揺るがす、 精神病院潜入実験』 : 米国版・ リアル 『ドグラ・マグラ』

書評:スザンナ・キャラハン『なりすまし  正気と狂気を揺るがす、精神病院潜入実験』(亜紀書房) 正気と狂気の境界は曖昧である。一一と言うよりも、それはよく言って「揺れ動いて」おり、身もふたもなく言ってしまえば、そもそも「境界など存在しない」。 だからこそ、私たちは「狂気」というものに惹かれる。無意識にそこから目を逸らすという行動も含めて、私たちはそれに魅せられており、本当の意味では、それを無視することなどできない。 「正気の私」が「狂気の私」を判定することなどできないのだ

福永武彦訳 『現代語訳 古事記』 : 〈文学〉でも 「歴史」でもない。

書評:福永武彦訳『現代語訳 古事記』(河出文庫) 昔から、ネット右翼とは数えきれないほど…

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佐藤岳詩 『「倫理の問題」とは何か メタ倫理学から考える』 : 『進撃の巨人』 的…

書評:佐藤岳詩『「倫理の問題」とは何か メタ倫理学から考える』(光文社新書) (※  屠…

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模造クリスタル 『ビーンク&ロサ』論 : 寄る辺なき 〈世界の縁〉に立つ

書評:模造クリスタル『ビーンク&ロサ』(イーストプレス) 『スペクトラルウィザード』に続…

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中沢新一 『アースダイバー 神社編』 : 天狗にさらわれ 〈犬の聖地〉へ : 中沢新…

書評:中沢新一『アースダイバー 神社編』(講談社) 中沢新一が、どうして「学問の世界」で…

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〈ルッキズム〉と美醜判断の根源性

書評:『現代思想 2021年11月号[特集]ルッキズムを考える』(青土社) 「ルッキズム」とは…

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R.A.ラファティ 『とうもろこし倉の幽霊』 : ホントに騒々しい〈ポルターガイスト〉

書評:R.A.ラファティ『とうもろこし倉の幽霊』(早川書房) 昨年刊行された、ハヤカワ文庫の…

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坂倉昇平 『大人のいじめ』: いじめにおける〈日本的な労働環境要因〉

書評:坂倉昇平『大人のいじめ』(講談社現代新書) 本書著者は、労働問題を扱うNPO法人「POSSE」の理事を務める人物である。つまり、労働問題の専門家だ。 では、その「労働問題の専門家」が、どうして「いじめ」という、一見「畑違い」にも思える問題についての本を書いたのか。それは、殊に日本の場合、「大人のいじめ」に関しては、労働環境の問題が大きく影響しているからである。 つまり、「子供のいじめ」がしばしば「教育環境」や「学校における教育現場環境」から生まれてくるように、「大人