見出し画像

うんこ狂想曲

うんこうんこと フワちゃんが叫んでいるのを聞いていたら
うんこな日々を思い出したのでこちらに書いておこうと思う。

うんこといえば、忘れられない日々がある。

それは親友ナナ(仮名)と訪れた1992年の中国だ。

まだ鑑真号とか色々あったあの頃。
ツアーでもなく、学校からでもなく初めて自分たちで訪れた海外だった。

列車に乗れば床はゴミだらけ。
バスに乗ればスリにあい
雑踏を歩けば自分がぶつかってきたくせに
ひどく怒られたあの頃。

そして辛かったはずなのに 
未だにあの時代の雰囲気を味わいたいと思うあの頃。

あの頃(そしてたぶん、田舎に行けば今も)
中国はどこに行こうが「你好(ニーハオ)トイレ」だった。

旅人が勝手に呼んでいた名前なんだけれど、
確かみんなそう呼んでいた(と思う)。

前のドアはなく
隣との間仕切りがあるだけ。
その間仕切りも自分の腰くらいの高さしかないから
用を足している瞬間を隠すだけのもので
用をたしつつ隣の人と「你好(こんにちは)」と挨拶ができるから
你好トイレだ。(そして実際みんな喋ってた。メンタル強い!)


ちなみに汲み取りタイプと水で流すタイプがあって
水で流すというのは水洗式ではなく 傾斜がある溝があり

川上から川下に流れる川のように水がチョロチョロと流れていた。

そして毎回それに伴いとても悩ましい問題があった。

それはポジショニングである。

うんこ

例えば、川上にポジショニングすると
自分のイチモツが川下に流れるので
他人様に見られるという辱め。

川下にポジショニングすると
川上の知らない人のモノが
偶然(必然?)見えてしまうという
ちょっとご飯どきに思い出したくない感じ。

どれを取ってもイヤキチでしかない。

本当に罰ゲームだ。

で、そんな時代に私たちが訪れた「桂林」。

画像2

水墨画のような山々が美しい都市だったんだけど

事件はそこで起きた。

いつものように私たちのトイレタイム。

桂林で有名な漓川(リージャン)下りのアクティビティを終えて、
コトを済まそうと田舎道のトイレに入る。

もう驚きはしない你好トイレよ, ニーハオ。

今回は汲み取り式。

私たちには旅で出来たルールがあった。

お互いのプライバシーを守るために
「いっせーのーせ!」で下にかがみ、
お互いが終了したタイミングを声かけ確認して 
「いっせーのーせ!」で着衣し、上がる。

お互い辱めを受けることがないグッドアイデアである。

この日も、お互い
「終わった?終わった?
じゃあ、いくで!!!!
いっせーのーせ!」で

2人が立ち上がった!!!

すると・・・

「ギャーーーーーーーー〜!!!!」

とナナが叫んだ。


え?

どうした?どうした???と横を向くと
ナナが半泣きになっている。

「腰に巻いてたポーチを、落とした・・・・・」
というではないか。

覗き込むと 深いボットン沼に
キラリと金具が光る
黒いブランド物のウエストポーチが。

当時の海外旅行はスリ対策で
ウエストポーチを腰に巻く、っていうのが定番だった。

「あー、やっちゃったな、
もうさ、観念しないといけないな。。。もったいないけど」

と私。

そうするとナナが
「絶対あかん。絶対とる!!!!
だって、あのポシェット、姉ちゃんのお気に入りやねん!
それに...

黙って借りてきたんやもん!!!」



え?・・・それって借りたっていうのか???

「それに………..

あの中にパスポートがあるし!」


えええええええ!!!!!!

オネエから黙って借りたのが重要じゃなくて
絶望的なのはパスポートじゃない???
絶対取らないといけないやん!!!!

どうやって?

手を伸ばして届くような距離じゃない。
どうする。早くしないと沼に沈む。

ふと、トイレの外に目をやった。
するとどうだろう。

漫画のように。ドラマのように。
遠くに中国人のじっちゃまが農地を耕していた。

ざっくり、ざっくり。鍬で畑を耕していた。

あああ!神よ、じっちゃまを登場させてくれてありがとう!!!

全速力でじっちゃまのところに駆け寄り
中国語のできない私たちは パントマイムで伝えた。

ワタシタチ 腰にツケテタ ポシェット
ボトーンと オトシタ
長〜い棒アリマスカ?
長〜い棒、カシテクレマセンカ?

妙なパントマイムに
うーむ、わかった!と
じっちゃまはなーんとなく悟ってくれて

長〜い竹でできた”しなる"棒をくれた。
さすがだ、じっちゃま。しなる棒!神です!

その しなる棒でナナは格闘の末
黒いポーチを救い出した。

その光景は未だに思い出す。

想像できますでしょうか?
ある程度のうん●の重量を含んだ
ウエストポーチが 

しなる棒の先っぽについている光景を。

いや、いや...
そんなことよりこれで帰国できる!!!万歳!
オオオオオオ!!!!!
パスポートォ!帰れる!帰れるよ!
よかったねえ!ナナ!!!

と私が拍手喝采したその瞬間

長いしなる棒 with うん●付きポーチ
を持ったナナがくるりと振り返り

「ちょっと、持ってくれへん?」

真顔で言ってきた。

まるで、よく女子トイレであるような
「手を洗う間ちょっとカバン持ってて」ぐらいの軽さ。
例えば「ちょっと靴紐結びたいからカバン持ってて」ぐらいの軽さ。
そんな軽さで

うん●付きポーチしなる棒を
「ちょっと、持ってくれへん?」


「え・・・・あ、、、、
棒を、もつのね。は、はい・・・・」と

躊躇しながらいうと

「え、違う。

ポーチ持って」


え・・・・・・

・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・
私にうん●付きポーチを持て、と?


「いや、ビニールでも、なんでもええねんけど適当なもの使って
ちょっと持ってて欲しいねん。

洗いたいから」


「ご.... ご、ごめんっ絶対絶対絶対いややー」

と断然拒否してしまった。0.1秒で。

するとめちゃくちゃ悲しそうな顔をしたナナが

「ちょっと持ってっていうただけやん・・・・
友達がいがないわ・・・・」と落胆し
ポーチを洗い始めた。

「ご、ごめんよ。とっさに。。。汗   で、でもさ、それ、洗っても
綺麗になるかっていうとビミョーやん?中身だけとって
それ、もう捨てようよ」

というと、くるりとまた振り返ったナナが言った。

「・・・絶対姉ちゃんに怒られるから….

洗って、こっそり返すねん。

完全犯罪はそれしかないから…..

と、いい、またコシコシと洗い始めた。

すごい。すごいぞ。ナナ。

そしてすべての桂林での美味しい食べ物や
綺麗な景色の思い出が吹っ飛んでしまって
もう、桂林=うん●のついたしなる棒
しか思い出さないようになってしまった。

そして何十年も経った今、私はこの思い出を思い出して一人でクスクス笑っている。旅っていいな。人生の最後までこの思い出で楽しめるってすごくないか?そしてナナ、本当に楽しい思い出をいつも有難う。

で。

帰国した後、どうなったか知ってる?

----------------------------------------------------
ナナからの報告。

「姉ちゃん、気がついてなかった。よかった❤
だから無事に部屋にこっそり戻して置いた」

ねえちゃん、GOD BLESS U !!!



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?