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エモくないから。

夜の一時、下着姿でタバコをふかす2人。
寒いねって言いながら、窓を開けて煙を外に出す。逆流してくる煙を、鼻でその匂いをとらえながら、少し咳き込む。

臨時収入が入ったからと、いきなり買ってくれた電子タバコ、俺を忘れないでと、暗号を入れられた。私にはよく分からないけど、この細っこい機械に入れられた数字と英数字の6文字を見るたびに、あいつを思い出す。

年に一度くらい、来月辺暇?と連絡が来る。他の女に振られた腹いせか、一緒に吸ったタバコの匂いのせいか、既読無視しても途切れないそれは、甘ったるい匂いが残る電子タバコのようだった。

三度既読無視をした辺で、一度あいつと飲みに行ったことがあった。多分色んな人に買ってもらったコーデで、あの時の笑顔で、中目黒の駅で待っていた。三軒くらいハシゴして、気がついたら自宅の床で寝ていた。

私は嫌いで、あいつの好きな匂いが、残っていて、くだらないことをしたと、自分のことを鼻で笑った。

くだらないのが、箸が転げても、面白いのが、若い頃。一緒に線路に投げ捨てた、タバコの吸い殻。エモいと思った、あのおでん屋。

どうでもいい時間を、くだらなく浪費した時間を、正当化したあの日々。エモいなんて言葉で彩って、本当は無色なくせに。

恋の賞味期限は、短い。自由恋愛に蹴りを入れて、軸足で夜を攫う。12ヶ月後にまた会いましょう。

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