遠くなっていく現実
頭はいつも冷静で、普通に生活できるよう
いろんな納得の仕方をしていて
心だけが勝手に傷んで涙を誘発させている。
彼が選んだ通り、離婚はした方がもちろん良かった。
あのまま二人いてもきっとお互い苦しかった。
お互いを幸せにはできない二人になってしまっていたから。
納得しているのに、辛いのは
きっとそうじゃない二人でいるために
上手くやれた人生もあったんだろうと思うから。
彼が決して悪い人ではなく優しい人だったからなんだろうね。
彼をそうさせてしまったのには、自分かもしれないと思うところがあるからなんだろうね。
彼を憎んでしまえば楽なのに、好きな人ができたと言われたとき、心底哀しかったけれど彼が本当に幸せになれるなら、と思ってしまった。
それほど、わたしは彼にできたことは少なかったのかもしれない。
仕事を一緒にしていたから、会社があったから、優しい可愛いだけの妻ではいられなかった。
会社に対することで意見の食い違いや、互いの批判も増えてった。
喧嘩を減らすために相手の思想に干渉しないようにし始めると、次第に交われる会話も減っていった。
互いを支え合ってここまで来たのに、いつの間にか存在が遠くなっていった。
わたしは小さな店でもあなたと情熱を捧げられたあの頃が恋しかった。
けど、そんな私情が挟めるほど経営の世界は甘いものではなかった。会社はどんどん大きくなって社員はどんどん増えて、周りの見る目や環境もどんどん変わっていって、彼の付き合う人たちも変わっていった。
変わらなかったわたしと、
変わらなくてはいけなかったあなたと。
ただ、あなたと幸せになりたかった。
きっと彼もそう。わたしと幸せになりたかった。
それは間違い無くて。
いつから二人はいろんなところで違う決断をするようになってしまったのだろう。
哀しいことに、会社が上手くいくにつれ
わたしたちの心は離れていったように思う。