自然の怖さと神秘を体感する
自然環境リテラシープログラム
第3回 紀北‘‘海と川‘‘コース 2020/12/12~/13
2020年12月12日、午前6時に集合場所の江戸橋駅に到着。今日は4時半起床であった。いつも7時起きの私にとっては、かなり苦痛である。
なぜ、今回は集合時刻が早く設定されているのか。それは、今回は、カヤックツーリングの企画であり、荷物をパッキング(カヤックに積む)して、無人の浜で一泊する予定であるからだ。パッキングと日暮れの時間を考慮し、出発時刻を早めたそうだ。
電車に揺られ、寝ているうちに目的地へ到着した。まずは小山ハウスにて、カヤックに積んでゆく荷物と置いて行くものを仕分けする。極力減らしたつもりであったが、ゴミ袋2、3枚がいっぱいになる量。入りきらないことを覚悟で小山浦に向かい、実際にカヤックにパッキングしてみることにした。
テントや寝袋など細いものはカヤックの先端へ、濡れたくないものは真ん中、水など安定性が悪いものはコックピット付近。衣服はビニール袋に入れ圧縮。学生スタッフの方のアドバイスや、前回の実習でガイドの森田さんから教わったことを思い起こして、荷物を積む。すると、すべてカヤックにおさまった。とても驚いた。(パッキングに必死になって写真を撮ることを忘れてしまい、上の写真は、浜に到着後の様子だが、実際にこの量の荷物がカヤックに入ったのだ。)
キャンプ地である浜に向かって漕ぎ出す。天気は晴れ、暖かい日差しとひんやりとした海風が心地よい。
だが外洋に差し掛かると、そんな余裕はなくなった。突然、風が強くなりはじめ、波も高くなった。必死にもがくも、どんどん逆方向に流されていく。深く漕ぐためパドルをたてた瞬間、強風に煽られた。たてたパドルが正面から受け、危うく転覆しかける。自然の脅威を感じた。
浜に到着。テント設営、夕食を済ませたのち座学。明日のカヤックツーリングのコースは、自分たちで決めることとなった。出発時刻やルートについて、メンバーと話し合う。出発は9時、尾鷲港を岸に沿って回り、近くの浜で昼食をとった後、洞窟がある大石に寄って小山浦に帰るルートになった。
このとき、私は胃腸の違和感と少しの吐気を感じていた。症状はさほど酷くはない。しかし、今は病院まで1時間以上はかかる大自然の中。大げさかもしれないが、もし悪化した場合すぐに対応できない。不安がおそった。持ってきたカイロと、森田さんに貸して頂いた湯たんぽで、とにかく腹部を温め、明日には回復していることを祈り、就寝した。
2日目、6時半起床。胃腸の調子も随分良くなった。朝食と片付け、パッキング、そしてコースを確認したら、30分出発が遅れてしまった。
先導は3組のペアで交代で行う。私の担当は出発ー尾鷲港ー昼休憩地点の浜、で最初に先導だ。学生スタッフやガイドの方々からの手助けは、なるべく受けず、自分たちで地図を見てコースを把握し、時間配分を考えることが今回のルール。
実際に先頭になると、独特の緊張感と心細さを覚えた。とりあえず予定のコース通りに進む。初めて漕ぐコースであったため、地図をみて、正確さを意識。ペアで確認しながら進んでいると、森田さんから止まれの指示。前方から船が来ていたのだ。コース確認に気を取られて、周りが全く見えていなかった。再び漕ぎ始めるとまたも森田さんからストップがかかる。新たな船が港から出て来ていたのだ。ひっきりなしに船が往来する。時間を考慮して、直接昼休憩地点に向かうルートに切り替えることにした。
漕ぎ進めると浜らしきものが見えてきた。だが、その浜が目的の浜なのか分からない。地図で確認するも、やはりよく分からない。実際に近づいてみると、上陸できるような浜ではなかった。地図を再確認し、自分の位置を把握。再び漕ぎ出すと養殖網が行く手を阻む。また止まってルートを考える。さらにそれを抜けると、今度は右手の岩の上に釣り人が、左手には釣り船がこちらに向かってくる状況に陥り、どちらにも接触しないよう、避けなくてはならなかった。やっとのことで、見えてきた浜。今までにない感動を覚えた。
昼休憩後、再度出艇。先導が交代。前がいることの安心感。到着点の小山浦までの海を心ゆくまで満喫した。
今回の実習の成長ポイント、それは自然を怖いと感じられたことだ。これまでの実習は、近くに小山ハウスがあり、カヤックツーリングではガイドや学生スタッフの方々に導いてもらえたりで、守られているという安心感が常にあった。対して今回は、無人の浜で停泊に加え、自らがメンバーを率いて、どこまでも続く海を、迷わず目的地まで先導していかなくてはならないという緊張感、不安があった。しかし、これがあったからこそ、自立心が芽生えた。景色がより美しく、カヤックがより楽しく感じられた。自然の危険を理解し、正しい対処法を身につける。これらの点において、今回の実習は、自然環境リテラシーを最も学べたと言えるだろう。