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保護犬のいる家。
最近の私は、保護犬のいるシェルターと呼ばれている場所にボランティアとして通っている。
仕事の都合で定期的ではないけれどその場所で保護されているみんなの顔を見にいくことが楽しみの一つ。
自分で調べたボランティアに参加の申し込みをして、初めてシェルターに顔を出した時とても驚いた。
そこには30頭ほどの犬と猫がいてその中を先輩ボランティアさんが慌ただしくお世話に駆け回っていた。
頭数の多さに圧倒されてぼうっと立っていた私に、先輩ボランティアさんがテキパキとここでの過ごし方とやる事を割り振ってくれる。
きっと色んな理由で人間に嫌な目に遭わされてきたであろう動物たちの目は、初めて来た私に鋭い目を向けていた。
実際にはみんなとっても心優しくて初めて来た人に怒ったり噛み付いたりする子はいない。
でも私を見るみんなの目は、どこか初めての人間に対しての疑いや見定める感覚を光らせているように見えた。
私の実家は動物病院を経営している。父が獣医でうちにくる患者さんのワンちゃんや猫ちゃんたちはほとんどの場合その家庭で愛され人間の愛情に触れてきているので穏やかな顔をしている子が多いように思う。(何らかの理由で病気や怪我をしているから病院に来ていて苦しい思いをしている子も多いけれど…)
その子たちに比べてはいけないかもしれないが、目の奥にある鋭さや感覚の過敏さには大きな違いがあるように感じた。
時間が経過してシェルターにいる保護犬たちとも仲良くなってきた頃、あるワンちゃんが私の足元に寄ってきてくれた。その子は過去に起こったことでシェルターに来た時にはもう既に片目がなかった。小型犬のため体はとても小さい。私が片手で軽く持ち上げられるほどに小さい。
その子は私がボランティアに初めて来た日、片方しかない目でしっかり私を見ていた。あなたは何者なの?僕たちの生活を脅かさないの?と聞かれている気がした。
初めて会った時の印象が大きいその子は今ではお腹を見せてくれるほどに懐いてくれている。そのことが本当に嬉しいし私自身が癒しをもらってしまっている。
とっても体の大きな大型犬の子もいる。立ったら私と同じくらいの身長があるほどに大きい。
初対面は私が立っていて、その子はお座りの姿勢で出会った。お互いにちょっと緊張感が走ったのを感じた。
私としては小さい頃に実家で飼っていた中型犬の散歩中に力で負けて引き摺られた経験があって、大きなワンちゃんはちょっと怖い記憶がある。
きっと向こうとしては、知らない顔の人間が一人現れて(しかもなんか小さい)この人は誰なのか、信じて大丈夫なのか、の不安が表情に現れていた。
少しの間見あっていたけれど、私が目線を合わせて座ってみた。
向こうは目を合わせたり逸らしたり、居心地が悪そうな気まずそうな顔をしていた。
まずは手をぐーの形にして、鼻元に少し距離を空けて近づけてみる。ワンちゃんに興味を持ってもらって匂いを嗅いでもらう。
安心してもらうための方法の一つはいきなり急に頭を触らないこと。驚かせてしまうと距離は中々縮まらない。
匂いを嗅いでくれたら首元を撫でてみる。優しく、ゆっくり触らせてもらう。大きなわんちゃんの毛は柔らかいけどしっかりしていて、首の筋肉がはっきり感じられるほど逞しい。
触っていても問題がなければ、話しかけてみる。
こんにちは、大きい体だね、かわいいね。
優しい目をしてるね。
綺麗な毛並みだね。
動物たちとは言葉での会話はできなくても心が通じていくのを感じる。15分くらいはそうして色んなことを話しかけていた。
そうするとおすわりの姿勢のまま緊張していたその子が、前足を崩して伏せの体勢に。表情も段々とリラックスしてきたのが分かる。
顔の周りも触らせてくれるようになって、終いには目を瞑って気持ちよさそうに撫でてもらっていた。
心を開いてくれたんだなと感じた。
大型犬の子は特に頭がいい子が多い。
大きなワンちゃんなので先輩ボランティアさんと2人で交互にリードを引けるようお散歩に出た。
先輩ボランティアさんは力も強い。お散歩にも慣れていて一緒に力強く走ったりもできる。
私が初めてその子のリードを引かせてもらった時、しっかりと目が合った。
交代するよ!と声をかけると、私が引っ張られすぎない程度の力で歩き出す。
少し走れるスペースに出て私が走り出すと、一緒になって走るがこちらの様子を定期的にみては
これぐらいなら大丈夫?転ばない?
と様子を伺ってくれていた。
なんて可愛くて賢い子なんだろう、心が優しくていい子なんだろう。
どちらが散歩させてもらっているか分からない状態だった。笑
こんなにも人間を信頼し尊重してくれる彼らの命を一部の人間は軽く扱ってしまう。その事がとても心を痛める。
このシェルターにいるみんな以外にも、助けることのできる命は限られてしまうのが現実ではあるが、縁があって出会うことができたみんなには残りの時間を安心して楽しくお腹いっぱいにご飯が食べられる、そんな時間をたくさん経験してほしい。
人間との楽しい時間があることを知ってほしい。幸せを感じてくれていたらいいな、とも思う。
少しでも辛い思いをする動物たちが減ってほしいと願っているし、こういった現実があることを知ってもらえる機会になって、私にも力になれることがあればいいな。
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昔はもっと目つきが悪かったね🐶笑
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