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出る側として。
先日、八景島シーパラダイスに友人と行った。
海が見たいという私の希望を汲み取ってくれ、動物好きの彼女と相談して行った先が水族館だった。
水族館に行くこと自体が本当に久しぶりのことで、私もテンションが上がっていた。
まず、着いたら”シーパラダイス”に繋がる橋があった。
名前の通り島にあるので橋を渡る必要があり橋の上からは海が見えていて青い海の上には小さな船が2.3浮いていた。
海が見たかった私はこの時点で結構満足度が増してきていた。
お天気がいい日ではなかったけれど、曇り空の下の青色を見て海だ…と思った。
最近の私の癒しはもっぱら海を見ることで、広い海を眺めていると悩み事も全部波が待っていってくれそうな気がする。
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シーパラダイスに行くまでのその橋には、そこいる動物たちの大きな写真が等間隔に飾ってある。
今からこの子たちに会えるのか、と期待も高まる。
橋を渡り切ると下りの広い円形の階段が現れた。
下には大きな広場とメインの水族館とレストランが入った建物がある。そこには日常とはかけ離れている、でもなんとなく懐かしい感じのする空間が広がっていた。
一度も来たことのない場所なはずなのに、なんだか懐かしい。
チケットを買いに行くとイルカショーと館内のチケットが一緒になったものがあったのでそれにした。水族館といえばイルカショーは外せない。
入ってすぐイルカショーの時間だったので、専用の水槽がある広場に向かった。
屋根はあるものの半分外になっている気持ちの良い場所だった。吹き抜けになった会場の外には海が見えている。
シーパラダイスに入場した時は、人が多いなとは思わなかったけれど会場内にある椅子はほとんど満席だった。
イルカショーというだけでこんなにも沢山の人が集まってきていてイルカちゃんの集客力は凄いな…なんて考えてしまう自分が少し嫌になった。
イルカが芸をするから可愛くて凄くて愛らしい姿をみんな見にくるんじゃないか、となんだか擦れた考えを持ってしまっている自分になんだか落ち込んだ。
頑張って訓練を積んできてくれたイルカちゃんたちに🐬ごめんなさいと心の中で謝った。
いざショーが始まってみると、飼育員のお姉さんが流行りの軽快な音楽に乗せて話し出した。明るい雰囲気のお姉さんはイルカちゃんが登場するまでの間のお客さんのワクワク感をを見事に盛り上げてくれている。
客席の場の空気を支配していく。
子どもの頃は単純にイルカちゃんたちが登場するまでの時間だったものが今はその飼育員さんのプロフェッショナルな立ち位置に感動さえ覚えた。
イルカショーは私が言うまでもなく、トレーナーさんと動物たちの日々の絆を感じさせる物凄く素敵な時間だった。
15分間という時間があっという間で、でも心がたっぷりうるうるに満たされたことが分かる幸せな時間が流れていた。
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そんな15分間を過ごして、5月に舞台の本番を控えている私はこんな風にお客様を幸せな時間に導ける存在でありたいな…と強く思った。
舞台には様々なジャンルの内容があるけれど、チケットを買い劇場まで足を運んでくださる方の大切な時間をお預かりしているんだと思うと、どんなお話であろうと全力で楽しんでもらいたいと思う。
出演者にとっては稽古期間を合わせれば、何十回中の何百回中の一回の本番かもしれないけれどお客様にとっては一生に一回の機会かもしれなくて。
その気持ちは忘れないようにしていたつもりだけれど、癒しを求めてきた水族館で改めて気がつくことになるとは思いもしなかった。
きっとそう感じることが今の私にとって必要で、イルカちゃんやトレーナーさんに呼び寄せられたのかもしれないな、と感じた。
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一日中水族館を満喫して家路に着き、海を見たかった気分だったことはすっかり忘れているぐらいに楽しんでいた私は改めて一日のことを思い出しながら、ホコホコした気持ちで眠りについた。
その日の夜、2匹のシロクマが両肩に乗っている夢を見た。
朝目が覚めた私は寝ぼけた頭の思考回路の中で、イルカじゃないんかい!と1人で思った。
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