ねんどの素材解説2021(6)樹脂粘土に他粘土を混ぜて、大きめの人形を作る
「ダイソー樹脂粘土」の性能がとても良く、作業感が愛用粘土「モデルマジック」と似ていて、発売された2014年後半から常用しています。ねんどの「粘り」が非常に強く、これにより、ねんど造型を始める時の最初の基本である「お団子状の玉」がとても奇麗に作れます。
この玉を押したりつまんだり、延ばしたりで形を作っていきます。他の樹脂粘土でもそれなりに玉を作れますが、ねんどの「粘り」が少ないと、ほんの数回やり直し(練り直し)ただけでひび割れが出てきたりして、2013年にテストをして諦めた事があります(※)。
ダイソー樹脂粘土にも限界はありますが、強い粘りのお陰で気にならないレベルでやり直しが効くのが嬉しいところです(モデルマジックの場合は、かなり乾いてかちかち状態になっても水を加えて練り直せばねんど性能が復活するので、納得がいくまで練習出来ます)。
(※)私が作っているタイプの「ねんど人形造型」に適した性能のみについて記述しています。作りたいものの目的により選ぶねんども違いますので、その他の樹脂粘土の性能が劣っているというわけではありません。樹脂粘土は元々スイーツデコなどの手芸用ねんどですので、私の様な使用法はおそらくかなり特殊です(スイーツデコも未経験です)。
ダイソー樹脂粘土で作れる人形の大きさ
作例 前回 ねんどの素材解説2021(5)より「因幡の素兎」2015
さてダイソー樹脂粘土の使用感がモデルマジックに近いといっても、「軽量粘土」と「樹脂粘土」の違いで、作れるものは違います。モデルマジックでは、自分流「ねんど人形写真」の撮影に都合の良い身長12~18センチサイズの人形を作っていました(工夫次第で30センチサイズの人形も出来ました)。
これが軽量粘土に比べてかなり重い樹脂粘土では、自重でねんどが潰れるので5~9センチサイズの小さめの人形が適しています(子供・初心者さん向けねんどワークショップはこのサイズで開催しています)が、やはり樹脂粘土で写真撮影用に大きめのねんど人形を作れないかと考えます。
ダイソー樹脂粘土の強力な「粘り」と「戻り」性能を壊さないまま、他の軽量粘土を混ぜてみます。
ハーティクレイ
作例「鬼っ子」2015
代表的な軽量粘土「ハーティクレイ」を混ぜました。テストの結果、ダイソー樹脂粘土の性能「粘り」「戻り」を壊さない比率は「ダイソー8:ハーティ1」程度まででした。8:1といっても、ハーティクレイは軽量なので、見た目の大きさは3:2くらいでしょうか。ここまで軽くして、ついに大きめの、写真のロケ撮影に耐えられるサイズのまずは鬼っ子人形が作れました。身長は15センチ(角まで含む)です。
ねんどの色
色についてのお話もしておきましょう。赤鬼の赤色には、「ハーティカラー」の赤を使っています。ねんどの赤色は各メーカーからのものがありますが、それぞれ赤というよりマゼンタ~ピンク系のものが多く、この鬼っ子には少しきつい感じの色目と思えました。ハーティカラーには、マゼンタ系以外の赤色も別にあり、こちらの赤は自然な和風の日の丸の赤色に近いです。
ねんど制作で特に気を使うのは、造型も勿論ですが「色」の管理です。色を混ぜて好みの色が作れた時には、分量をメモしておきましょう。なるべくなら複雑な作業にならずに済ませたいものです。ワークショップ用の見本色を作る時には尚更です。同様に青鬼の「青」、虎のパンツの「黄色」も、各種ねんどを使い分けています。パンツの黄色は、前回(5)で解説の「グレイスカラー きつね色」を混ぜました。
モデルマジックねんどでの制作時には、全てモデルマジックだけで間に合わせていました。現在は適材適所で複数の種類の樹脂粘土を使い分けています。
「ねんど人形写真」のテスト。大分豊後高田熊野磨崖仏を背景に、昔話「鬼の石段」のロケ撮影。
・人形に、ポーズがつけられるようになった。
固まるとプラスチック状になる樹脂粘土の、ポップなキャンディ風味が可愛い鬼っ子人形には似合いました。また、固まるととても丈夫な樹脂粘土の特性を活かして、腕をボディに接着せずに竹ヒゴで留めて初めて人形にポーズをとらせました。写真の画作りの幅が大きく広がりました。
さて一度探求を始めると、とことんまで追求してしまうのがいつもの癖です。ハーティクレイを混ぜて大きめの人形が作れるのは分かりましたが、もっと、お気に入りのモデルマジックねんどの風味に近づけられないものか。ハーティクレイの、紙粘土の繊維っぽいひび割れの感じなど気になってきました。
モデナソフト
作例「雷神タケミカヅチ」2015
ベースは同じく「ダイソー樹脂粘土」に、次は「モデナソフト」を混ぜました。どうやら、モデルマジックねんどに代わる私好みに調合したねんど素材がこれで見つけられた気がします。作例「タケミカヅチ」の、左は2012年にモデルマジックで。右が2015年、ダイソー樹脂粘土プラスモデナソフト。
「モデナ」と「モデナソフト」の解説です。2014年夏過ぎ頃にダイソー樹脂粘土が発売された時に、「モデナに似ている」と評判でした。試してみると、ダイソー樹脂ねんどの強力な「粘り」と「戻り」がモデナというより、愛用ねんどモデルマジックに近いと思えました。「粘り」のお陰で、ねんど細工の最初の基本の「玉」が作れて、また「戻り」を利用して、粘土表面にへらなどで柔らかく滑らかな凹凸を作る事が出来ます。へらの跡をくっきりとさせないので、絵でいうと鉛筆で下書きを重ねる感じで形が作れます。
ダイソー樹脂粘土の「粘り」と「戻り」がチューインガムだとすると、「モデナ」はキャラメルや、またロウソクに近い感触でした。
「モデナソフト」
モデナと一緒に初めてテストした時「硬質感」と「透明感」のあるモデナにモデナソフトを混ぜる事で、仕上がりの見た目の「マット感」がモデルマジックにかなり近くなるので注目していました。モデナ側にダイソー樹脂粘土並みの「粘り」と「劣化への強さ」があれば、この時に愛用粘土が決まっていたでしょう。
モデナソフトは単体で使うよりも、基本モデナと混ぜるためのねんどの様に思えます。軽くてふわふわしていますので、もしかしたらスイーツデコでパンやカステラを作れるねんどなのでしょうか(スイーツデコは未経験)。
鬼っ子人形では、ダイソー樹脂粘土にハーティクレイを8:1程度の重さで混ぜました。今回は同じ樹脂粘土なので、思い切って軽くする為にダイソー樹脂粘土にモデナソフトを2:1で。
まずは、作例「雷神タケミカヅチ」のアタマ(髪)から制作。ねんどの使用量は60グラムで。風になびくこの髪がタケミカヅチのパーツでは最も大きいので、これがちゃんと出来れば他のパーツも作れます。成功でした。
顔パーツを作っていると、ねんどの「戻り」具合も思った以上に良好で、お陰様でねんどに細やかな「表情」をつけられる様になりました。タケミカヅチの口元など、これまでやった事のないレベルで微妙な表情を演出出来ました(ここはモデナソフトの感触ですね)。まるで、ねんど細工が上手になったみたいです 笑。
モデナソフトの性能部分も引き出せて、今回の混合は大成功でした。これからの自分の愛用ねんどがやっと出来ました。
作例「風神タケミナカタ」2015
「ねんど日本の昔ばなし」「ねんど古事記」他で撮影に使った人形は、2015年以降はほぼこの「ダイソー樹脂粘土」プラス「モデナソフト」の組み合わせで制作しています。
作例「風神・雷神」
出雲神話「国譲り」より、「雷神タケミカヅチ」と「風神タケミナカタ」の闘い。
タケミカヅチは高天原(たかまがはら=天上)最強の剣神ですが、名前の「建御雷」には「雷(いかづち)」の文字があり「雷神」でもあります。
タケミカヅチと対峙する、「葦原中国(あしはらのなかつくに=地上)」を治めるオオクニヌシの息子・怪力のタケミナカタ。
「元寇」の際に蒙古の軍勢を退けた「神風」は、タケミナカタの御神威である・・と、鎌倉幕府により日本第一の「風神」とされています。
出雲の「国譲り」神話でのタケミカヅチとタケミナカタの闘いは「相撲の始まり」とされています。最初の相撲はなんと「雷神」と「風神」の闘いだったんですね。
2012年の古事記編纂1300年「神話博しまね」の時には、まだこの「タケミカヅチ 神通力で腕が剣に変化バージョン」と「タケミナカタ」は作成していなかったので、また出雲を訪ねてロケ撮影したいです。
その時は「風神・雷神バージョン」も作って、ド派手な特撮写真・映像を撮影したいなあ。