ターンの集合分析を始めるうえで
知人に誘われて、今週末のAPT仁川(8/9~8/12)に行くことになりました。
ここのところ筋トレしかしてないんですけど、無意識にカード握りつぶしたりしないかな?大丈夫かな?
ターンの集合分析は、フロップと何が違う?
近年、PioSolverやGTO+といったGTOソフトの台頭に併せ、国内外のGTO界隈では、プリフロップやフロップの集合分析が進められてきました。
前世代のまとめブログやこのNoteでも、主にフロップを分析対象として、様々なシチュエーションにおける回帰分析をしてきました。
また、Twitter界隈では、フロップにおいて、オリジナルが全てのハンドで小さめのCBを打つ「レンジベッティング戦略」も話題となったところです。
こうした集合分析から生まれたフロップの疑似GTO戦略は、GTOの再現性および実践での汎用性がとても高いことから、多くのポーカープレイヤーに好まれてきました。
1/3potBetや1/4potBetといった、従来の常識を覆す小さめのC-Betも、今ではよく目にするようになりました。
一方で、ターン以降の分析については、個別のハンドごとの具体的なシチュエーションを取り出した分析手法に留まり、集合分析については、注目されることが少なかったように思います。
そのため、「大抵のフロップで小さく広くCBを打つのがGTO的に好ましいのはわかったけど、相手にCBをコールされた後、ターンはどうすりゃいいの?」という疑問に対しては、「うーん、それぞれのボードで、落ちたカードごとに考えて!」というのが現状です。
そもそも、なぜターンの集合分析は流行らないのでしょう?
考えられる原因をいくつか挙げてみます。
①シチュエーションの複雑さ
ポーカーは、ストリートを経るごとに、シチュエーションが枝分かれするゲームです。
フロップの分析までは、1,000のボードテクスチャーに対する回帰分析は、比較的簡単にできました。
しかし、同じように1,000通りのフロップについて、ターンの集合分析を行う場合、それぞれのフロップに対し、上図のように49通りのターンカードの全てを検証する必要があります。
フロップでは1,000通りで済んだ分析が、ターンに進むと約50,000通りのシチュエーションとなってしまいます。
つまり、ターンの集合分析は、フロップと比べて途方もない量に増えてしまうことが難点です。
(補足として、49通りのターンカードを平準化した指標を使って集合分析することも可能ではあります。
しかし、その分析が意味する結果は、「このフロップのボードテクスチャーだったら、一般的なターンのアクションは70%potBetだよ!」と言いながら、実際にターンで落ちたカードを見ずにアクションするようなものです。
いくら集合分析に基づいているとはいえ、ちょっとお粗末な気がします。)
②ターンカードの曖昧さ
ターンカードをどう評価するかは、とても曖昧です。
異なるフロップにおいて、同じターンカードが落ちた場合、エクイティおよびアクションに与える影響は、一定ではありません。
どういうことかというと、下の図のような現象です。
上図は、[KdJc8d]と[TsTh5s]におけるTurn Report(それぞれのターンカードが落ちた場合のプレイヤーのエクイティ分布)の比較です。
概して、ターンカードの「T」は、オリジナルに不利なカードです。
しかし、左の[KdJc8d]と右の[TsTh5s]では、ターンカードの「T」は、オリジナルのエクイティに対し、真逆に作用していることがわかります。
このように、同じターンカードが落ちた場合でも、フロップのボードテクスチャーによっては、オリジナルに有利なカードであったり、コーラーに有利なカードであったりします。
よって、ターンカードの集合分析をする場合には、フロップのボードに応じたターンカードの一般化(ボードにペアを作るターンのカード、新たにストレートコンボを作るカード、フラッシュを完成させるカード…など、ターンカードにラベル付けをする工程)が別途必要となります。
こうした「ターンカードの評価の曖昧さ」は、3枚のボードテクスチャーだけを見れば良かったフロップよりも、さらに分析作業を面倒にしているといえます。
③レンジvsレンジのバラつき
これまで、複数のボードにおける集合分析をするうえで、フロップでは「プレイヤー間のレンジが一定である」という明確な前提がありました。
これにより、他の前提条件を一致させたまま、ボードテクスチャーという「独立変数」について、プレイヤーのエクイティおよびアクションに与える影響を集合分析できました。
しかし、ターンまで進んだシチュエーションを想定した場合、全く同じフロップのアクションを経ても、プレイヤー間のレンジが既に異なっていることが当たり前です。
例えば、上図は、BBvsBTN(3betpot)の[Ah7d4h-2c]ボードにおいて、BBのフロップ+ターンのダブルバレルに対するBTNのレンジになります。
フロップのCBの時点で、BTNはハンドレンジの一部をFold、一部をRaiseしているため、ターンでダブルバレルを受けるハンドレンジは、図のように偏っています。
そのため、たとえターンまで全く同じアクションヒストリーを想定しても、前提となるボードのテクスチャーによって、レンジに残るコンボ数や偏りは大きく異なります。
複数のボードにおけるターン以降の集合分析を行う場合は、それぞれのボードにおいて、既にレンジvsレンジの中身が異なっていることに留意しなければなりません。
④GTOソフトにおけるデータ出力の煩雑さ
集合分析をするためには、冒頭のPioSolverやGTO+といったGTOソフトが欠かせません。
このNoteでは、一例としてGTO+を使ったターンの分析方法を紹介します。
なお、ターンの分析においては、フロップではより高頻度で発生するシチュエーション(オリジナルによる高頻度少額CB⇒フラットコールなど)を採用した方が、実践での汎用性が高く、ターンにおけるレンジvsレンジが広い状態での分析ができるといった利点があると考えます。
100回に5回のシチュエーションよりも、100回に20回のシチュエーションを分析した方が、手っ取り早く役に立つ、ということです。
具体的なソフトの使い方ですが、まず、左のメニューで①Build Treeを選択した後、②Build decision TreeでTurnのBet Sizeを入力します。
(入力しない場合、Bet Sizeがデフォルト値の1つのみとなり、アクションがCheck or Betの2択となるため、分析としてはやや不十分です。)
その後、③BUILD TREEを押し、上部のアクションフロー図に反映させます。
上部のアクションフローが反映したら、①Run solverを押した後、②PROCESS DATABESEでGTOを回します。
(単一のボードでも回せますが、中央のActive database modeにチェックを入れ、右にDATEBASEをセットすれば、1つのボードを解析したら次のボード…と全てのボードが解析するまで自動で動きます。)
そして、ターン以降の分析をするためには、フロップのアクションが終わった後のカード選択画面(①)から、②Turn reportを選択します。
なお、Turn reportは、分布表・散布図・棒グラフと、図形式を変えることができます。
今回は、各ターンカードにおけるエクイティ分布と最適アクション比率を表計算ソフトに持っていきたいので、右下のボタンでテキスト出力します。
これで、各ターンカードごとのエクイティ分布と最適アクション比率がテキストになりました!
後はこのテキストを全選択し、Excelなりスプレッドシートに貼り付けておしまいです。
…と、フロップまでは、同じような工程1回で、1,000ボードをテキスト出力できていました。(もっと詳しい工程は、過去記事をご覧ください。)
しかし、ターンはこの工程を経て、やっと1つのフロップボードにおけるターンカードの影響をテキスト出力できたに過ぎません。
もちろん、ターンの集合分析というからには、1つのフロップボードだけでは不十分であり、複数のボードにおけるターンカードを調べる必要があります。
つまり、ターンの集合分析を行うためには、このテキスト出力の単純作業を、ボードの数だけ繰り返さないといけません!
ああ、めんどくさい!
個人的には、これがターンの集合分析が手を出しにくい、最も大きな原因です。
とはいえ、やってみよう!
ここまで、ターンの集合分析における難点を挙げてきました。
様々な仮定と前提条件が必要となるターン以降の集合分析は、あまり実用的ではないかもしれません。
また、分析結果も、フロップの時より直感的にわかりにくいことが想定されます。
現状、ただでさえ読み手を選ぶNoteが、さらにマニアックになってしまいます!たいへんだ!
とはいえ、フロップの分析は、2bet potも3bet potも一通り終えて、若干マンネリ化してきたところです。
「レンジベッティングをした後、結局どうすりゃいいの?」に対し、統計に基づいた答えを示すため、新しいことをやってみましょう。
そんなわけで、今回の記事は、ターンの集合分析における留意点でした。
次回から、集合分析(ターン編)が始まります。
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