FUJI ROCK FESTIVAL'00 in Naeba(2000年7月28~30日)【アーカイブ記事】
初出:Smashing Mag, 2000年
四度目のフジ・ロックである。このフェスティバルが行われた97年の頃と比べるとオーディエンス・主催者の意識の向上と共に、全てがよくなってきている。考えてみればこういうフェスが四年間続いていること自体が凄い。一年目にあれだけのひどい結果を出したら、普通は続いてはいないだろう。未だにフェスティバル、そしてロックが文化の一つとして完全に日本に根付いたとは言い難いが、徐々にそうなりつつあることは確かだし、それは二年目以降、先にも書いたように関わってきた全ての人たちの意識の向上の結果だ。
そしてフェスが終わった後、僕は今一度、問いただしてみる。「このフェスに求めるモノは何なんだろう?」と。
フジ・ロックはオーディエンスに「能動」を根底にして、二つの挑戦をしてきている。それは「状況」に対してどこまで能動的になれるか、と言うこと、そして「音楽」に対してどこまで能動的になれるか、だ。
まず最初の挑戦に関して、今年の場合は僕たちオーディエンスは「勝った」と言っていい。「不便さを楽しもう」と言う、ムチャクチャなスローガンは「どんな状況でもやり方によっては楽しめるんだよ」と言うことだ。そしてそれは今年、三日間、多くの時間が雨続きだったにも関わらず大したトラブルもなくフェスを終わらせ、多くの人が「成功」と言い切っている事からも判るように、ほぼ完全に達成されたと言える。
もう一つの挑戦、音楽に対しての「能動」であるが、これは色々思うところがあった。
暴言を吐かせてもらえば、今年のラインナップを「物足りない」と言う人は数年後、ロックをただの青春を回顧するためのノスタルジックな道具としてしか位置づけられないだろう。はっきり言って今年のフジはとんでもないラインナップだっと言える。『fujirockers.org』の掲示板で「物足りない」と書いていた人には、自分の足と目で確かめる気はないのか、と言いたかったし終わった後もそんな事を言っている人にも同じ事を言いたい。
今年のラインナップはロックのこれからを面白くする地殻変動にも似た現象をもたらすアーティストが多かった。特にホワイトステージ、レッドマーキーはそう言うアーティストで溢れていた。実際にMOGWAI(レッドマーキー、7/29)のステージは神懸っていたとしか言いようのない壮絶なステージだったし、LEFTFIELD(ホワイトステージ、7/30)は日本ではまだまだ未知の次元のダンス・ミュージックを持ち込んできてくれた。
日本勢ではTHA BLUE HERB、BUDDHA BRAND(共にホワイトステージ、7/29)がここ日本でも何か大きな事が起きそうな予感をさせてくれたし、最終日にグリーンステージで行われたSOUL FLOWER UNIONのステージはその予感を更に強くさせてくれた。
僕がフジ・ロックに求めているモノはこれなのだ。何かが起きそうなワクワク、あるいはそのワクワクそのもののアーティストの「今」を目撃すること。一年目のRAGE AGAINST THE MACHINE、二年目のBECK、三年目のUNDERWORLD、TRICKY。ただし、一、二年目と三年目、今年とではまったく意味合いが違う。
昨年、ZZ TOPを観ながら「なんでここにUNDERWORLDが来ない?」と思った人は少なからずいたはずだ。彼らがもし、グリーンステージであのパフォーマンスを見せていたら間違いなく「フジ・ロック三年目」を語るときに真っ先に持ってこられるはずだった。しかし実際はそうではなかった。そして今年も、顔となるはずのグリーンステージでフェスを象徴する様な出来事は起こらなかった。
確かに先述したMOGWAIをはじめとして、いいライブはあった。グリーンステージでもPLACEBO、FOO FIGHTERSのライブは良かったし、ZEBRAHEADの盛り上がりは遠目で観ていてもいい光景だった。そしてフィールド・オブ・ヘブンでのKINOCOSMOは僕の中で最後を最高に締めくくってくれた。そう、「僕の中で」だ。
みんなそれぞれにインパクトの強いライブに出会えただろう。それはそれでいい。幸福な時間に出会えたと言う事なのだから。ただ、やはりあそこにいた人、それこそ全てに「凄い!」と言わせてしまうようなライブはなかったのではないか。
A PERFECT CIRCLEは肩すかしだったし、イアン・ブラウンはライブの内容はひどくはなかったが、どうもオーディエンスとの間に馴れ合いの状態が出来上がってしまっている。THE CHEMICAL BROTHERSに至っては論外、あんなの許したら絶対に日本で真面目にライブやらなくなる。映像とか音質とか、そんな小手先のごまかしに騙されていないでもっと怒るべきだろう、「ビデオ見てんじゃねえんだ、ナメンな!」と。
すでにバンドとして未来がなかったBLANKEY JET CITYにそれを求めるのはどうかと思うし、やっぱり僕はTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTに期待していた。しかし結果は「あと一歩」と言ったところだった。
こんな事を言っても仕方がないが、もし去年TMGEが出ていればそれは間違いなくフジ・ロックを象徴したモノになったはずだ。『GEAR BLUES』リリース時のTMGEの凄さは「明日死んでもおかしくない」と言うせっぱ詰まったあの感覚が半端じゃなかった。だから同年の『ライジング・サン・ロック・フェスティバル』にてTMGEは「象徴」になれた。あそこで鳴らされた“世界の終わり”の感動は今 年、アリーナバンドの余裕と貫禄を身につけたTMGEが、お約束のようにプレイした“世界の終わり”では再現されなかった。PRIMAL SCREAMに関しても僕を「観ておけば良かった」と後悔させるような感動を伝えてきた人はいない。
グリーンステージで何も起こらなかったこと。それだけが今のフジ・ロックに物足りない。
僕は何も、フジ・ロックがダメになったと言いたいわけじゃない。ただ、やはりあのグリーンステージで僕は狂ったように感動したい。号泣したい。ずいぶん身勝手な話だ。でも本気でそうしたいからこそ、盲目的にフジ・ロックを愛するわけにはいかない。更に凄いフェスティバルへ向けて、「ロックの現場」に対し、オーディエンスである僕たちとSMASHがもっと能動的になるべきだと思う。まずは足を動かし、その目で全てをきちんと見つめよう。その結果が来年の苗場で、もの凄い感動を呼ぶことになるかもしれない。
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