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「南極の科学研究基地と死体」のイラストを描いた話
イラストレーターとしてはまだまだ修行中の身である自分だが、最近ようやく家事・育児とのバランスもとれるようになってきた。女性というのは、妊娠・出産を経て、こんなに大人になってから何かを極めるというのは体力的にも時間的な意味でも本当に簡単なことではないと心底感じる。
もっと若ければ、学んだことも今よりスムーズに吸収することができただろうし、育児がなければこんなにも精神を削らずに、自分のやりたいことに全力集中できただろう。でも、だからといって時間を巻き戻せるわけでもないし、育児をしたくないというわけではない。
この年齢だからこそ、そして子供と過ごす毎日があるからこそ描ける絵は確かにあって、それが自分の人生を豊かにしてくれていることは言うまでもない。逆に独身の人ならば、自分の内面と向き合う時間をたくさんとれることで生み出される、その人にしか出せない味の絵というのがあるだろう。つまりは、どんな形の絵描きであれ、絵を描く人というのはその人の人生がまさにその作品に表れてくるんだろうなと私は思う。
そんな自分でも「好きこそものの上手なれ」というように、大好きな絵を時間を見つけて続けてきた結果、ようやく少しずつではあるが、仕事を依頼してもらえるようにまでなってきた。
さて、前置きが長くなったが今回は、前回の最後に書いた2024年の終わり頃に受けた仕事が「南極の科学研究基地と死体」のイラスト依頼だったことについてお話ししようと思う。
厳密に言うと、「死体を書いてください!」と言われたのではない。(もしそんな切り口で依頼されていたら、参考画像なんかを想像してオエッとなっていただろう←断らない。)
実際には、国際共同制作ドラマを紙芝居風に紹介するPR動画内に使用するイラストを制作して欲しいという内容だった。サスペンスドラマということで、その中のシーンで死体が登場するというわけだ。
私自身、映画鑑賞が大好きで、特に海外作品は映画もドラマも色々見てきて、趣味で軽くレビューなんかも書いたりしているので、この上ない幸運としか言いようがなかった。そして、この作品の舞台が南極という極寒の地にある科学研究基地で、そこに集まる登場人物たちの中で巻き起こる殺人事件というものだった。
さらに、なんとも嬉しいことに出演者の中には日本人俳優がいるじゃないか!というわけでそれが誰かというと、今や海外で大活躍中の「山下智久」さん、なんとあの、山Pである。
まさかイラストを続けていて、山Pの静止画像をこんなにまじまじと観察しながらイラストを描く日が来ようとは…!想像だにしていなかった。今回依頼されたシーンでは、登場人物を計10人描く必要があったのだが、完全に自分に馴染みのあるアジア人である山Pを描くのにも正直苦戦しているというのに、ここにきて私は完全にスランプに陥るのである。
というのも、この登場人物10人のうち4人がほぼ完全なる髭(←言い方)なのである。はっきり言って、そんなに髭のないチョロ毛の人物はいっそのこと髭を描かない方が他のキャラとの差別化ができるのでそこまで忠実でなくともかえって良いと思った。だが問題は、それ以外の髭メンツ達である。しかもその4人中1人はよくよく映像を追って調べてみると途中どこかのシーンで髭を剃った!?とみられる。
そうこの時、アジア人である私は「欧米人の髭はみんな同じに見えちゃう問題」に直面していたのである。描いてみるとあの人もこの人もみんな同じになってしまうのだ。それでは困る、だって南極科学研究基地で起こる四つ子の殺人事件じゃ、PRどころか内容が変わってしまう。
それでも納期は刻々と迫ってきていて、「髭問題」を理由に投げ出すわけにも行かないので、やれることは全部やった。いただいた資料で人物をよく観察し、自分で死ぬほど検索もした。その俳優さん達の普段のようすから髭の感じがもう少しハッキリわかる画像があるかもしれないとSNSを見てみたり、ウィキペディアで何系の血が入っているからこんな顔の系統なのかということまで調べた。自分で集められる資料に限界が来たところでようやくなんとなく、欧米人の髭の違いを描き分けることができていったのである。
ここまで髭に格闘していた私だが、不思議な事に死体を描くのはさほど難しいとは感じなかった。今考えてみても、死体<髭だなんて思いもよらなかった。
ここで、これからイラストレーターに仕事を依頼したいと思ってくれている人に、しがないイラストレーターの私からちょっとしたお願いがある。イラストレーターの仕事は、単に絵を描くことだけではないということを心のどこかにぜひ留めておいていただけたら嬉しい。むしろ、絵を描く作業というのは元々好きなことだから、描きにくいものであってもなんとかやってのけられるのだが、ネックはその前段階の必要な資料や情報集めといった下調べなのである。
そういうのはあればあるだけイラストの精度は高まる(だって検索にかかる時間を「描く」という表現に回せるのだから!)し、きっと依頼をする側と描く側、双方のイメージ共有の助けにもなる。なので、もしこれからイラストレーターに仕事を依頼をしたいと考えている方がいたら、些細な情報や資料でもぜひ遠慮なく提供して欲しいなと思う。
最後に、ここまで頑張って描いたイラストをPRさせていただきたい。
お時間のある方は、ちょこっとだけ今回の髭にまつわる苦労バナシを思い出し見ていただけたら、なお嬉しい。
今回、私の描いたイラストは動きをつけていただき、より一層お話が気になるような仕上がりにしていただいた。
一部ショッキングなシーンがあるのでご了承を。というか、私のイラストもなかなかショッキングなのかもしれないが、ショッキングになり過ぎないように心がけたつもりだ。オムニバス編の方にも一部登場しているので宜しければそちらも。
ちなみに私がイラスト担当したのはシーズン1だが、THE HEADはただいまシーズン3がHuluで独占配信中のようなので、気になる方はぜひ。(2025年2月5日現在)
▼Hulu Japan公式YouTube
Huluオリジナル「THE HEAD」Season1|紙芝居風編
Huluオリジナル国際共同制作作品| オムニバス編
▼Hulu Japan公式X
「紙芝居にしたらかわいくなると思ったのに…」
https://x.com/hulu_japan/status/1858223581395616011
そしてなんと、「THE HEAD」のJorge Dorado(ホルヘ・ドラド)監督がこの公式Xの投稿に反応してくれたのである!!
Nunca me acostumbraré a lo bien que han tratado y siguen tratando a The head en Japón.(訳:The Headが日本でこんなに大切にされていること、いまだに全然慣れません。)
まさか、監督にまでイラストを見てもらえるなんて嬉しすぎる。。涙
一般の方々もイラストに対して色々な温かいコメントをくださっていて、本当にありがとうございます。
この仕事ももう昨年のことだが、この経験を通してもらったたくさんの刺激は、これからの制作活動の活力にしたいと切に思う。(現になっている!)
お時間があって私の他の作品も見てみたいなぁと思ってくれた方には、ぜひこちらのポートフォリオサイトもご覧いただけると嬉しい。
お仕事の依頼もこちらからしていただけます。
イラストレーターReinaのウェブサイト
『nemurineko ねむりねこ』