理想のESFPに篭絡されたいという話
筆者はINTJだ。
INTJは一般的に、参謀とか人の心がないとか言われる。それは表面的には真実だ。確かに抽象的で小難しい話が好きだし、周りの空気を読むのは大の苦手である。
けれど人間の心がないわけじゃない。人にもよるのだろうが、自分自身はかなりFiの影響を受けた人間だと自覚している。何かがしっくりこない、やってもやっても手に馴染まない、なんとなく辛い、というとき、実は自分の気持ちをないがしろにしていたということが何度もあった。
こういう気持ちを抱くのは実は自分INFPとかINFJだからだろうか?と疑ったこともあるが、おそらく違う。自分の感情を意識せずに済むとき、私は幸せを感じているからだ。矛盾しているような気もするが、この先にいい結果が待っている予感があって、そのためにどうすればいいのかもわかっていて、ひたすら目の前のことに集中しているときには、自分の気持ちなんて考えない。意識に上る必要すらないほど、自分の気持ちが現状にぴったり沿っているからだ。そういう状態のとき、自分を上手にコントロールできている感覚がある。そのときの自分に満足していて、人生が上手く行く。だからやはりそちらが自然な状態なのだと思う。
自分の心が分からなくなり、どこへ向かえばいいのかと途方にくれるのは、大概疲れているときだ。そういう状態のとき、自分が何が好きで、何が嫌いで、何をしたいのかがまるで分らなくなる。行こうとしている道は正しいのか、いや正しいに決まっている、それなのにどうしてこんなに体が動かないのか、なんて怠惰な人間なんだと自分を責める。分からなくて、動けなくなる。普段は他人なんてこれっぽっちも必要としていないのに、誰かに自分の人生を操ってほしいという気持ちになる。
そのとき思い浮かぶのは、いつも一人の女性だ。
彼女は黒髪で、瞳が綺麗で、体が柔らかい。肌が透き通っていて、滑らかな皮膚の下に十分な血が通っている。その身体で私を包み、甘やかしてくれる。私が何も言わなくても私の望みを分かっていて、私が普段話したくても話せない、小難しくて面倒くさい長話や、誰も興味のない自分の話にいくらでも付き合ってくれる。私は何も考えていないので、最初は辛うじて筋が通っていた話は、そのうちあちこちに飛ぶ。論理性があるようでなくて、けれど私の中では全てがつながっている。支離滅裂な話を、彼女はいくらでも聞いてくれる。それだけじゃなく、議論に乗ってくれる。彼女はいつも楽しそうで、稀に私をはっとさせるような聡明さを見せる。私が思ってもいなかった、しかし驚くほどしっくりくるアイデアで、私を夢中にさせる。
そんな架空の人格が、昔から私の内側にいる。名前は特にないが、彼女は私と共に年を取り、いつも変わらず魅力的だ。昔は特に根拠のない妄想だと思っていたのだが、MBTIを学ぶうちに、彼女にもその理論を適応できるような気がしてきた。
上記の私の説明を心理機能で考えてみる。肉体的な魅力はSeの範疇だろう。私の望みを分かって甘やかしてくれるのはFiだ。面倒な会話に付き合ってくれるのはTe、はっとするアイデアはNi。私の心理機能とまったく同じである。ただ、順番が違う。
彼女は私の心理機能を逆向きに満たしてくれる存在なのではないだろうか。彼女は私が欲するものを満たしてくれる。普段は意識されない、しかし私という人間に強く影響を及ぼしている、下位の機能から順番に。私は彼女に全ての主導権を明け渡し、自分という存在を丸ごとどこかへ導いてもらえることを強く求めている。
彼女にMBTIを当てはめるならESFPになるだろう。彼女と話すことによって、私は癒される。そのとき、私は一人でいなくてはいけない。彼女は実在しないからだ。内向的な人間に一人の時間が必要というのはこういうことなんだろうなと思う。こんな話、あまりにもスピリチュアルすぎるだろうか。同じような感覚を持っている人がどこかにいるといいのだが。インナーチャイルドとも少し違う気がするし。何か心理学的な説明のつく現象だったらいいと思う。自分の頭がおかしいわけではないと、誰かに証明してほしいから。