TRUMPシリーズの世界観について気になったこと

前回までのあらすじ。

はじめての繭期2020(『TRUMP』2015年NU版、『グランギニョル』、『SPECTER』2015年版、『マリーゴールド』、音楽ライブイベント『繭期夜会』の無料配信)に毎晩正座待機状態で見入り、その合間には『LILIUM 少女純潔歌劇』も自習するという受験生も真っ青の短期集中学習によってTRUMPシリーズ沼に転げ落ちた私。こんな底なし沼にうっかり足を踏み入れちゃって、私いったいどうなっちゃうの……?!

……うん、とりあえず買いました。まずは基本のキからということで円盤を。選択肢が複数ある作品についてははじめての繭期2020の配信対象ではなかったバージョンをまずは観てみようと思って、2013年のD2版『TRUMP』(TRUTH/REVERSEセット)、2019年版『SPECTER』を選択。未見の『COCOON 月の翳り』&『COCOON 星ひとつ』ももちろん購入。『グランギニョル』、『LILIUM 少女純潔歌劇』(←サントラ同梱とか神の采配ですか?! 残酷な神に支配された物語なのに……)、『マリーゴールド』も迷う余地なくポチるの一択なので考える必要がなくて楽だなぁ……! あはははは…… 
さらに『COCOON』のパンフレットと戯曲集『デリコ・トリロジー』も購入。短編集『Pendulum』や『ソフィ・トリロジー』も再販されますようにと祈りつつ、追加で2015年NU版『TRUMP』TRUTHバージョンの円盤も結局ポチりました……。D2版を観始めたら最初に刷り込まれたNU版をあらためて見返したくなりまして……。どうせならREVERSEバージョンも一緒にポチるべきだったかな……。

そして今現在、購入した円盤等をまずはさらっとひと通り鑑賞した結果、沼底を揺蕩う溺死体と化しているわけですが、ストーリーやキャラクターに対する思い入れが強まるにつれてTRUMPシリーズの世界観そのものについても興味がわいてきたので、今後の沼探索ライフのために気になった点に関する覚書を残しておこうと思います。
沼に沈んでからまだ日が浅く、10年以上も続くこの長大なコンテンツの内ごく一部にしか触れられていないため、私が気になった点について何らかの形でとっくに答えが明示されている可能性も高いと思います。が、今となっては入手困難なアイテムも多いようだし、キャスト・スタッフ陣によるイベントでの発言など公式には形に残っていないものもたくさんありそうなので、遡っての答え合わせは無理と判断し、とにかく書き出すだけ書き出しておくことにします。当然ネタバレだらけです。


気になった点その1:TRUMP世界における輪廻転生観

「生まれ変わったら僕は君になりたいな……」とは『TRUMP』終盤において瀕死の観客の心にとどめを刺してくるウルの名言だけれど、この世界では魂の生まれ変わりは実際に”ある”ものなのか。ウルに関してはダンピールゆえの短命というほぼ確定的な未来+死の恐怖に怯え続けるという呪いがあり、永遠の命や生まれ変わりといった思想に傾倒しやすい下地が揃いすぎているので判断基準にはできないけれど、なにしろこのシリーズ、「輪廻」というキーワードが頻出するのだ。楽曲のタイトルで、あるいは歌詞の中で、何度となく繰り返される「輪廻」。
直接的な「輪廻」という言葉以外にも運命の輪がぐるりぐるりと……。同じセリフ、同じ仕草、同じ構図、同じ関係性が何度も何度もリフレインする。因果律は巡りめぐって(おおむね最悪な形で)収束する。『SPECTER』における「何故あなた達は同じことを繰り返すんだ……」という皮肉が効きすぎたクラウスの台詞、忘れられませんね……。
リインカネーションが本当に起こり得るかどうかはともかく、現実世界と同じように多くの人(※人間種と吸血種の双方)が生まれ変わりってあるかもね、あったらちょっとロマンあるよね、くらいの感覚でふんわりと信じているというのが手堅い線かなと思います。が、このあたりは宗教観とも絡んできそうなところなので判断が難しい……。
そして、もしも……もしもだけれど、TRUMP世界の中では輪廻転生が実際に起きる(起きている)のだとしたら……物語の見え方が激変してしまう……


気になった点その2:TRUMP世界の住人たちの宗教観

登場人物の名前(※ハンターのコードネーム(?)は東洋風だけど)や服装の設定、「ギムナジウム」や「クラン」といった言葉から近代ヨーロッパを連想させる世界観を持つTRUMPシリーズ。物語の核となるヴァンパイア種の設定も中世以前のモンスター寄りのそれではなく、近代以降のヨーロッパにおけるゴシックホラー色が濃い幻想生物的なもの。こうした点からどうしてもキリスト教との関連性も気になるところ。
ちなみに現実世界のキリスト教の教義では”輪廻転生はない”というのが公式見解だけど……というのはひとまず置いておいて、とりあえずTRUMP世界においても人間社会ではキリスト教(に近い一神教)信者が最大派閥と仮定する。彼らは吸血種のことを本能的に嫌悪する。そりゃ噛まれたら基本即死、奇跡的に生き残っても後天的ヴァンプと化して人間社会には戻れないわけだから相容れるはずがない。不可侵条約&水面下での様々な交渉によってぎりぎりで保たれた均衡。
問題は吸血種の宗教観ですね。『TRUMP』事件の約3000年前になんらかの要因でクラウスが唯一の真祖=不老不死の吸血鬼になり、同時期に人間の亜種としての(不老不死ではない)吸血鬼も突然変異的に発生しだしたという設定が公式年表に明記されているわけだから、もともとはクラウスも普通の人間だったと考えられる。
……ちょっと待って!その真祖となった要因について詳しく聞かせて?!シリーズの中で数千年単位で時間が経過しても機械文明が発達する様子もなく世界が荒廃したままなのと関係あります?SFのド定番ネタ・オーバーテクノロジーによって国家間紛争が激化し人口が激減して世界が衰退(以下略)系のアレでクラウスの真祖化&突然変異的な吸血鬼の発生はそのオーバーテクノロジーの負の遺産的なアレなのでしょうか……?等々、知りたいことや妄想を拡げたくなる要素が山のようにあるけれども、とにかくクラウスが元はただの人間だったと仮定すると、神への信仰心を持ったまま神に祝福されない不死の怪物と化してしまったという可能性が……。え、しんどい……。
人間種と吸血種、捕食される側と捕食する側。生物として歩む道が分かたれてしまった以上、人間だった時に持っていた(かもしれない)信仰も棄てざるを得ない、というかむしろ自分の方が神に見捨てられた気持ちになってそれはそれは深く絶望するでしょう……。うう……エリ・エリ・レマ・サバクタニ……
この神に見放されたクラウスのことを一部熱狂的な原初信仰者さん達が永遠の命を持つTRUMP=我らの神として崇め奉り、頼まれてもいないのに勝手に血なまぐさい生贄の儀式を決行しがちなの、本当に皮肉が過ぎるというかあまりにも残酷……。

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