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Photo by
mirecat
217.芝居夢
2020.6.20
30年以上昏睡状態だった父が、とうとう息をひきとった。
私は「ロミオとジュリエット」の舞台に出ることになってその通し稽古をしていて、葬儀に参列しないことにした。
コロナのために全く稽古が出来ず、ほとんどぶっつけ本番の芝居だった。
ロミオ役とジュリエット役は著名な俳優で、気鋭の脚本家による新解釈を交えた脚色で、ほぼ二人芝居。
私はト書きの部分を朗読する役だった。
私は黒い喪服を着ていたので、衣装はそれでちょうど良いとのこと。
演出家もとても有名な人らしいのだけど、やる気がない感じで何だかいい加減。
開演時間が近づいているのに、最後まで通しでやることが出来なかった。
「あの、私はどこで立てば…?」
「あと、あと! 舞台に移動してから指示する!」
稽古はホールが入っている建物の小会議室のようなところでやっていて、そこから舞台に移動するため、小道具類を大きなランドセルのような箱に入れ、背中にしょって部屋から出ると、隣の会場で父の葬儀が終わったところだった。
しまった。
親戚のおばさんたちに見つからないようにしなくては。
こっそりとトイレに入ったのだけれど、トイレはとても混んでいた。
背中の箱が邪魔でしょうがない。
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