339.半明晰夢
大学時代の同級生のおうちに招待された。
別の同級生に、Tさんに会いに行く、と言うと
「演奏会?」と聞かれた。
別の同級生Kちゃんが、アマチュアオーケストラで公演があると招待してくれるので、大学時代の同級生たちとは定期的に会っていたのだった。
「ううん、Tさんは演奏会に来られないから家まで会いに行くの」
Tさんのおうちは大豪邸だった。
大きな玄関を入ってすぐに階段があった。
真っ直ぐな階段。2階まで上がるためにずいぶん登った。
「あ、これは階段を登る夢やな」と気づいた。
2階にはたくさんの動物標本があった。
博物館のようだった。
現存しない古代の爬虫類や哺乳類の模型もあった。
床にミニチュアの動物模型をジオラマのように並べて展示しているコーナーもあった。
2階から3階まで登る間にもたくさんの動物標本が吊るしてあった。
「旦那さんの趣味なのかなぁ」と思いながら階段を登っていった。
邸内には、ただ動物標本や模型だけを見物に来た人たちも大勢いた。
ただの見物客ではなく、この家の家主であるTさん夫妻に招かれた客であることが誇らしかった。
Tさんの居室にたどり着くにはまだまだどんどん階段を登って行かねばならないようだ。
Tさん宅には新婚の頃、公団住宅に住んでらした時にお伺いしたことがある。美しい結婚式の写真を見せていただいた。
それからずっと年賀状だけのお付き合いになって。
最後に会ったのはご葬儀の日で、Tさんは棺の中で眠ってらしたのだった。
そんなことを階段を登りながら思い出していた。