恋人のはなし

note、書くときに、「書く」とか「新規作成」とかじゃなくて「つくる」なの、いいな。何者にもなれなかったけど、それでもわたしになにかを「つくる」ことができたなら。


恋人の話をしよう。わたしの自慢の恋人。
泣きたくなるくらい愛おしくて、実際、名古屋に帰る東京駅の改札で別れるとき、わたしはいつも泣いている。

恋人はとても頭が良い。頭が良い人はそれだけでセクシーだと思う。気分転換に数学の問題を解いたり、趣味で法律の勉強をしたりしている。本を読むのも好きで、分厚い推理小説を1日で読んでしまったりもする。珈琲が好きで、自家焙煎のなになにの豆で淹れた珈琲が美味しいんだよと話してくれたこともあったがわたしにはさっぱり分からなかった。寝起きが悪くて、朝は珈琲を飲んでからでないととまともに会話できない。聞き上手でわたしの話をいつも最後まで優しく耳を傾けているけど、実は自分が話すことも好き。わたしが作ったごはんを美味しそうに食べてくれる。歩くときはいつも手を繋ぐ。恋人と話すと、わたしはいつも笑っている。

でもいつも不思議に思う。どうしてこのひとはわたしと付き合っているのだろうかと。

まずわたしは珈琲が飲めない。付き合いたての頃、無理して珈琲を一緒に飲んでいたけれどすぐにバレてしまった。たまにアイスコーヒーを飲むこともあるけれど、あれは氷でどんどん珈琲が薄まるからいいのであって、ホットなんて苦すぎて絶対に飲めない。わたしたちはお酒が飲めないけれど、だからこそ珈琲くらいは一緒に飲めた方が良かったんじゃないかと思う。恋人の家に泊まると、恋人は自分のぶんの珈琲を淹れるついでに、わたしには少しの珈琲にたっぷりのミルクと砂糖をいれた飲み物をつくってくれる。恋人は最初、「カフェオレとコーヒー牛乳、どちらがいい?」と聞いてきて「同じことでしょう」と言って軽く言い争うことになった。
そうしてわたしは恋人が言うところの「コーヒー牛乳」を手にして、恋人の飲む珈琲のお供をする。

いつも「守られている」と思う。

もうわたしは今年で26になるし、小さい頃思い描いていた26歳は立派な大人だ。でも蓋を開けてみれば、わたしは情緒不安定ですぐに泣き喚くしプライドが高くて頑固なクセに自分に自信がなくてほんとうに扱いづらい女になったなとむしろ感心すらしてしまう。
わたしだったら絶対にわたしを選ばない。

あまりにも恋人がわたしといる理由がわからくて友達にも相談した。
あっさりと「でも可愛らしい2人組じゃない」と言われた。
なんだかわたしはこの言い方がとても気に入って、あんなに真剣に悩んでいたのに、なーんだ、「可愛いらしい2人組なのね」と思って妙に納得してしまった。

わたしと恋人、可愛らしい2人組でこれからも生きていこうね。

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