ゆめのはなし
なんだか眠れないので
思ったことをつらつらと。
彼の夢に僕が出てきたらしい。
手を繋いで散歩をしたんだと。
ごちゃごちゃな詰め合わせの夢の羅列を聞いて
おかしくて笑ってしまった
空想の夢の話
あなたが出てきた夢を聞かせてほしいとせがむので
嘘に本当を混ぜて話していく夜更けです
桟橋のある海辺
あなたと砂浜を眺め並んで歩いていたら
履いているのがだるいとサンダルを脱ぎだした
空いている手を僕に向けて
"手を繋ごう"と、ふふと笑う
僕もいいやとサンダルを脱いで
空いた手で差し出された手に触れた
生ぬるい砂が指の間をすり抜けて
さわさわとくすぐっていくのを肌で感じながら
朝焼けが好きだと言うあなたの横顔を優しく愛しく見つめている
現実という名前を背負った黒い猫が
後ろから僕らの足元をすり抜け駆けていった
振り返りあの若葉色の瞳が僕のことをジッと見つめて
「忘れたわけじゃないよね」
頭に響く声と聞き覚えのある鈴の音に
心臓が共鳴するかのようにドクンと跳ねた
次に瞬きをしたときには寝室の天井が見えていて
夢だと自覚しながらも後ろめたさを感じながら僕は
「忘れたりしないよ」と呟いた
時間がない。あなたとこうして夢の話をする一時は
本当に永遠に続いたらと願うほどだ。
だけど。時間がない。僕には時間がないんだ。
約束をしたから、その約束を果たすためには
僕はここにはいられない。
それなのにあなたは
楽しいことをしようと僕に手を差し出してくる。
会ったときにやりたいこと、考えておいてと。
会えるわけがないのに。
僕がこうやって生きることに縋りつきたくなるのは
あなたが僕の名を呼ぶその声や
優しさの添えた言葉のせいだと
あなたのせいにしてしまう。
僕が悪いのに。