ゆめのなか

覗く前から既に覗かれていて
漆黒に飲み込まれてから始まる物語

あなたの声が聞こえて
覗き込んでもなにも見えない
途中からあることに気づく
深淵って覗く前から黒いから
既に飲み込まれてても気付かないんじゃないかって

あなたが弾くそろばんの樺玉の音
切り絵の妖怪の幕を駆け抜けて
どんなに逃げても伸びる手が僕を離さない

目の前にある算盤を手に話し始めるあなたは
お決まりの言葉から話し始めて玉を弾いていく
それって本当に合っているの?
口元のアップを見ながら
パステルやモノクロな妖怪の切り絵のなかを足早に駆けて
伸びるあなたの影から逃げていく

どんなに早くその場を駆け抜けても
音に敏感なその腕は僕を捕らえて離さなかった

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