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ボスにいきなり「会社がうまくいかない元凶はお前」と言われた日


集客の仕事をはじめて数ヵ月したころ。
僕はボス(事業部長)との1on1で衝撃の質問をうけました。

「nemuさんはこの事業部を壊そうとしていますか?」

!?!?#!#?!????!!
見覚えのない単刀が麻酔なしで胸に直入しました。

戸惑いながら理由を聞くと……
とある”派閥争い”が原因だというのです。
「いま営業部が対立しているのはご存じでしょう。解決のため聞き取り調査をしていると、nemuさんの名前がやたらと出てくるものですから」

それを聞かされた瞬間、僕の脳裏に1カ月ほど前の出来事が記憶によみがえりました。



とある休日。
僕は同じ会社の営業・店長(ステーキハウスの店長みたいな顔だから)に呼び出されて、有楽町のフーターズにいました。
ちょうど僕が、会社に誘ってくれた営業・シゴデキ君とケンカをしていた(記事参照)ころです。

店長はシゴデキ君が入社する前のエースで、典型的な女好き。好みの女性を入社させて周りにはべらせる肉食獣です。数々のNTR経験が、僕とシゴデキ君の一瞬の不和を嗅ぎ取ったのでしょう。

「nemuさん、アイツとなんかあったんすか?」
店長はピクルスのフライをつまみながら、フーターズガールのセクシーなオレンジ尻を横目に切り出します。ここは俺が持ちますんで、なんでも頼んでくださいと言いながら。
(食欲と性欲と金欲を同時に刺激するなんてズルいぞ店長!)

「もしよかったら俺につきませんか。ちゃんと話すのは今日が初めてですけど、nemuさんはやっぱり話が分かる人だ」
店長はゆっくりと無精ひげをさすりながら、決め台詞を放ちます。

「僕ら2人なら、うちの会社ひっくりかえせますよ」

!!?!?ひっくり?!!!??
会社ってそんなお好み焼きみたいなもんなの!?

初めて味わうスケールの話に心が寒くなりました。
これが”政治”ってやつなのか、と。
(しかし仮にも弊社は上場企業、現実的に考えそんなことが――)
私の浅慮を吹き飛ばすように、店長が野望を語ります。

「実はうちのオヤジ、国動かしてるんすよ」
上級国民のおぼっちゃまでしたわ。

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難しい話は置いておきますが、ようするに自分が国の大きな仕事を取って、ボスやシゴデキ君すらも一気に部下にしてやろうというのです。

なぜ彼がそんなことをするかというと、要するに嫉妬ですね。
かつての兄貴であり、最近はシゴデキ君に夢中のボスへの復讐のため。ボスと同い年の僕を味方につけようとしたのも、愛情に飢えたからなのでしょう。

結局その日、僕は店長の味方になるともならないとも答えませんでしたが、彼は一方的に僕のことを「アニキ」「nemu兄」と呼ぶようになりました。


後日、男2:ギャル9みたいな飲み会が行われました


店長ゆくところに店長軍団あり。
店長が(勝手に)弟分になれば、軍団員たちももれなくついてきます。
軍団員は全員、長谷川潤みのあるパッキパキ女子ですから、本社で練り歩いてる時の存在感は半端じゃありません。

本社ですれ違う時、順番に「アニキ~💕」と手を振ってくるのですから戦慄します。僕はわりと地味な見た目ですから、パリコレデザイナーみたいなキラキラ赤ニットでも着ないとバランスが取れません。

(なんかはずかしい――)
心の中ではそう思っていたのですが、兄貴と呼ぶなというのもそっけないかなあと好きにさせていたのです。



話は戻ってボスとの1on1。
ああ、彼は愛弟子が手を離れてよからぬことを考えているのを察知して、僕をけん制してきたんだなと。
事情は分かりました。
が、もちろん納得なんてできるはずがない。

「どの件か存じませんか、そんな意図はありません」
僕は毅然とした態度でそう返しました。

「そうですか……まあいずれにせよ、店長がこんなに反抗的な態度を取ることは今までになかった。部署に余計なトラブルを呼んだこと、事業部の売上低迷を招いたのはすべてあなたの責任です」

はぁ??????????
もう判決が出てるの?????
しかもなぜ売上???????????
俺インフルエンサー過ぎない???????????

疑問が止まりません。
余りに飛躍しているし、適当に罪をなすりつけた感が強すぎます。

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シゴデキ君の顔をつぶしたくもないし、しぶしぶその場は収めた僕ですが、ボスに対する信頼は完全に壊れました。
事業部の低迷とか、別のスタッフのモチベーション低下とか、部下個人の責任みたいな言い方して言いわけないでしょ。しかも冤罪だし。

思えばこれが、ボス=サイコパスだと気づき始めた最初の事件でした。
失礼しちゃう。


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