野球好きでよかった①〜男を見せろ!岡田監督が檄!岸田VS金泰均 8月22日 ロッテ-オリックス編〜
新しい試みを始めます。いちプロ野球好きとして数々の試合を見てきた中で厚かましくも後世に伝えたいと感じたシーンをYouTube動画を交え、山際淳司さながらにノンフィクション小説仕立てにして紹介していきます。
「野球好きでよかった①」と『①』を付けていることからわかるように、当然シリーズ化を目論んでます。
しかし誰にも響いてないなと感じたら数回で辞めます。
非衝撃的カミングアウトします
さて、前回の記事で不器用ながらも熱く赤裸々に猛虎愛を語っておいてなんだが、実は3年ほどオリックスファンをやっていた時期があった。
というのも、俺自身長らくプロ野球に触れてきた中で阪神優勝監督でもある岡田彰布氏にすっかり心酔してしまい、同氏が監督として就任していた2010年から2012年までのオリックスを心底応援していた次第である。
岡田監督が指揮していた2004年から2008年までの阪神は完成された大人のチームであった一方、当時のオリックスはと言うと主力選手の大半が20代の若手で構成された未完成のチームであった。
そんな文字通り青い集団を如何にして常勝軍団にしていくのか、俺は目が離せなくなり、挙句の果てにファームの試合を観戦しようとグリーンスタジアム神戸サブ球場に行き、球場限定メニュー『岡本カレー』を食すまでになっていた。
結果として極めて濃密な3年間であったと懐古している。
2010/08/22 千葉ロッテvsオリックス
2010年パリーグは楽天以外の5球団はシーズン終盤まで縺れる展開で、日々手に汗握る戦いが繰り広げられていたと記憶している。
とにかく当時のパ球団はホームラン打者が多くて形勢逆転が目まぐるしく変化し、感情が追いついていかず俺自身絶えず情緒不安定であった(でもそんな自分は嫌いではなかった)
さて、今回はそんな日々を象徴するかような動画を紹介します。2010年8月22日の千葉ロッテ対オリックス戦のワンシーンです(しかし今改めて見返しても、あのときの緊張感が鮮度を保ったまま蘇ってくる…)
当日の順位はロッテ3位、オリックスは5位で自力優勝は消滅していたが(完全ではない)、CS進出に向けてこの日もエース金子をリリーフで登板させるなど総力戦で混戦パの中で必死に食らいついていた。
5−3の2点リードの9回裏、マウンドはこの年から抑えに定着した劇場型守護神岸田護。3番井口を敬遠気味の四球で歩かせたのち、2死満塁で打席には第2回WBC韓国代表メンバーでもあるロッテの4番金泰均。一発の恐怖もあるがやたらとチャンスに強いバッターというイメージで、この日4打数3安打(うち1本塁打)の好成績を収めている。
「このまま逆転されてしまうのか…」
心臓への負担が深刻化してきたその時であった!
なんと岡田監督自らがマウンドに向かったのである(0:16〜)。同氏は著作にて「監督は例外を除いてマウンドに行くべきではない、投手コーチの仕事を奪うことになるからだ」と述べており、同時に自身がマウンドに行くとすれば、伝説の天王山と評されている2005年9月7日の阪神対中日戦に代表されるような、その後のシーズンの分岐点となる場面に限るとも語っていた。
つまり岡田監督はエース金子のリリーフ投入でも分かるようにこの試合を重要な一戦と位置付けており、もし落としてしまえば今シーズン終了を意味すると捉えていたことがわかる。
そして見逃せないのがファーストのカブレラがマウンドに集まっているという点である(0:26〜)。カブレラがマウンドに行くなんてことはまずない。常に我関せずといった態度のあのカブレラを、ここまで本気にさせるとは相当な熱気が球場全体を覆っていたことが窺える。
岸田はさすがの制球力で外角低めに2球続けて追い込んだのち、見せ球が外角高めの手が届くところに入り、ファールフライに。ここでもカブレラは激走し、スタンドインする打球を追うというガッツを見せる(2:51〜)。普段面倒臭がってファールフライを追わないくせに、このときばかりはアドレナリンが過剰分泌されていたのだろう。
無理はない。
岸田のやたらと長い間合いと鈴木のサインを覗き込む際の瞳孔の開きっぷりに加え、マリーンズファンの飛んだり跳ねたりするサッカーのサポーターみたいな応援が緊迫感を煽り、俺自身一種のトランス状態に陥ってたもん。映像的な意味合いでもこれ以上の演出はないだろう。
さて、この場面で最も恐れるべきは内角に投じて一発を浴びることであり、バッテリーは徹底的な外角低めを攻める配球に終始するわけだが、4球目(3:46〜)、胸元に来ないと判断されたかとうとう金泰均にヒット性の当たりが飛び出す…。
ライン際…ここでフェアならば同点、尚もピンチという緊張の一瞬…
万事休す…
誰もが思ったその時…まさかのライト下山のセルフジャッジで九死に一生を得る(3:50〜)。下山は熱くなりすぎです。
一呼吸入れる意味で一球外してワンツーとし、勝負の6球目、フォークで落とし空振り三振。金泰均としてはあそこでバットを止めることは難しくて、4球目をフェアゾーンに落としたかった。
もしここで岸田が打たれ逆転負けを喫していたら…そのままズルズルと負けが込み、当時最下位に沈んでいた楽天のようにペナントレースから弾かれた状態になっていたのではないかと想像する。
野球好きでよかった
今回、記事のタイトルを「野球好きでよかった」としたのは上動画のコメント欄に書き込まれていたersfcさんのコメント
この勝負はマジで面白かったw
燃えたな 野球好きでよかった
から拝借している。
この「野球好きでよかった」ってフレーズが個人的に偉く刺さりました。
野球の面白さ、奥深さ、醍醐味、すべてが凝縮されている。まさに俺も「野球好きでよかった」って感じたもん。
今後もテレビはおろかネットでも誰も取り上げないような、何なら選手本人ですら忘れているような「野球好きでよかった」と思える動画を紹介し、専門性の高い内容が注目を集めるnoteの野球関連記事群の中で、少しでも存在感を放っていければと存じます。