根本宗子の面談室vol.43 ゲスト:春名風花さん イベントレポ
2019年12月22日「根本宗子の面談室vol.43」ゲスト:春名風花さん
約3時間のトークイベントの様子を少しだけご紹介。
レポート不可のシークレットトークもありますので、ぜひ毎月ロフトプラスワンで開催中の「根本宗子の面談室」ご来場ください!
オープニング:ひとりトーク。近況報告
「今、出来る、精一杯。」の劇場仕込み日に、家の模様替えをした根本。テーブルがとんでもない大きさだった。
根本「カタログ見てネットで頼んだんですけど。なんにも合ってない。値段以外合ってないのよ」
どうやら業者のサイズ表記ミスだった。劇場も仕込み、家も仕込み状態でてんやわんや。
根本「とりあえず友達が家にきてくれて、とりあえず笑ってもらって」
「今、出来る〜」の稽古場が、別案件の長井短さんと一緒だった。
根本「稽古覗きに来たんだけど、清竜人さんが背を向けてピアノを弾いてるのを見て『あれ清竜人?こっちむかねぇかな』とかひとしきり騒いで。顔見て『ちょーかっこいいんだけど』って帰って行きました。さすがだよね、好きですそういうとこが。」
結局本番は観に来なかった長井さん。
根本「“本番は観に来れない”でおなじみの長井なんで」
ゲストトーク:
・春名風花さん(以下、はるかぜちゃん)呼び込み
こういう会はあんまり来ないので緊張しますね、と。
はるかぜちゃん「普段は法務省とか、弁護士会の講演会とか、『いじめを考えるシンポジウム』とかばっかりで(笑)」
根本「(客席の)おじさんの圧が強いけど気にしないで」
2019年12月の月刊「根本宗子」「今、出来る、精一杯。」に出演したはるかぜちゃん。オファーのきっかけは映画『レモニー・スケットの世にも不幸せな物語』の吹き替えがすばらしかったからだそう。
はるかぜちゃん「舞台を観ていただいて吹き替えの依頼をいただいたことはあるけど、逆は初めてですね」
・「今、出来る〜」舞台裏
根本「このトークのためにあんまりお互い(思いを)劇場で喋らないでとっておこう、って言い合ってたらしゃべらなすぎたよね(笑)」
大きな劇場での公演だったため、ヘアセットやマイクセットなど準備に時間がかかり、毎日、劇場の入り時間から本番までの時間が割とかつかつだった。
根本「マイクをつける公演かつけない公演かで、俳優にとっては芝居前の“アップ”のルーティーンが変わるよね」
はるかぜちゃん「普段はストレッチとかかなり念入りにするんですけど。バタバタしてたので、首だけ重点的にストレッチをしたりとか、無駄に楽屋まで走ったりとかしてました」
とにかくはるかぜちゃんが若い、という話。
根本「はるかぜちゃんのマイクチェックの時がすごくて。あれがプロか、ってみんなで話してたんですよ。みんな“ベテラン”って呼んでた」
はるかぜちゃん「いま、18歳です」
根本「芸歴がマツコデラックスの1年先輩なんでしょ(笑)」
篠崎役の伊藤万理華さんが23歳、はるかぜちゃん演じる久須美と篠崎はともに20歳の役で、それでも2人の間に5歳の開きがある。
はるかぜちゃん「でも、舞台に出させてもらうようになったのはここ4年くらいで」
4年で30本近い舞台に出演しているそう。
根本「それ、吉本の人のスケジュールだよ」
実は根本脚本の「女子の事件は大抵、トイレで起こるのだ」のオーディションを受けていたはるかぜちゃん。
はるかぜちゃん「でも、その頃は舞台は朗読劇をやったことがあったぐらいだったので。根本さんの作品に今、出れてよかったと思いますね」
・はるかぜちゃんの魅力
仕事をしてみてのはるかぜちゃんの魅力は「圧倒的に演出が通るスピードが早い(飲み込みが早い)」点だと語る根本。「ここをこうしてほしいんだけど、どうやったらその方向性を足せそうかな?」と相談すると、「今までのぼくはこうしてきたので、こうしてみます」と返答が来る。
根本「すごく建設的な稽古ができました」
久須美という役について。今まで演じられてきた久須美よりもう少し「篠崎のことが(恋愛っぽく)好きなようにも見えるような久須美」として演じてみたというはるかぜちゃん。
はるかぜちゃん「久須美は潔癖で恋愛ができない子なんじゃないかと。そんな中で、篠崎にとっての一番の王子様になりたい、みたいな衝動で動いているような子という感じで作ってました」
根本「うんうん。20歳ぐらいの頃ってそういうのあったよね〜って言おうと思ったけどはるかぜちゃんまだ18歳だったね」
(会場笑)
周りの女子校出身者たちのふるいまも参考にしていた。女子校には「女子校の王子様」というのがいて、女子との距離が近い女の子なのかなぁとイメージしていたそう。
はるかぜちゃん「恋愛に向けられない情熱を友情に向けてしまう子というイメージですね」
根本「そこはでも、ものすごく(役に)出てたんじゃないですかね。今までの久須美との最大の違いですよね。見え方によっては篠崎に恋心を抱いているんじゃないか?と見えなくもない。そこは、はるかぜちゃんがやってくれたおかげで広がったところな気がします」
・お客さんからの質問コーナー
「(はるかぜちゃんへ)別の役をやれるとしたらどの役をやりたいですか?」
はるかぜちゃん「久須美役がハマり役と言われたけど……しいて言えば“利根川”ですかね。『臆病者ばっかりだなぁ〜』っていうセリフが好きで」
根本「池津(祥子)さんがすごくチャーミングに魅せてくれてましたよね」
当時初演の際演じた、梨木智香さんが「池津さんみたいな女優になりたい」と話していたことから、池津さんをイメージして書いたのだそう。
根本「それを池津さんに話したら喜んでくれました」
「初演(と再演)と、今回の舞台の違いは?」
根本「一番はセットですね。『ママズキッチン』っていう看板があるセットとないセットの候補があがってきたんですけど。劇場に入ってみて、「あるセット」の方にしてよかったと思いました。大きな劇場なので空間が埋まらないセットだとすごくだたっぴろく感じてしまうので。『ママズキッチン』って名前自体あまり意味をもってつけた店名でもなかったのでどうかな?とは思ってたんですけど、文字を動かすという遊びもできたし、俯瞰で見ても文字が気にならなかったのでよかったなと」
はるかぜちゃん「衣装のエプロンにも『ママズキッチン』っていう刺繍が入ってて、すごく気持ちの上がる衣装でしたね」
「(はるかぜちゃんへ)根本さんの舞台に出てみて一番楽しかったこと・逆につらかったことは?根本さんは稽古中に何か投げたりしてこなかったですか?」
(会場笑)
はるかぜちゃん「根本さんはちゃんと全てを言葉にして伝えてくれようとしてくださる方なので。根本さんの譲れないことと、役者の解釈が違うことで議論が長くなったりしていると、すごくかわいくて……。すごく真剣な場面なのに、ぼくは『根本さん、かわいいなぁ』って思いながら見てました(笑)」
根本と清竜人さんが稽古中にはるかぜちゃんに注目していたそうで
根本「休憩中にばってみると、たまにすっごい口開けて寝てる時があって(笑)。竜人さんと『いやぁ、18歳くらいって、眠かったよねぇ』って話してました。あれみると、はるかぜちゃんって若いんだなって安心しました」
「(はるかぜちゃんへ)劇中で『ブス』と言われることに戸惑いはありませんでしたか?」
はるかぜちゃん「自分の顔面って芸能界では美しい方ではないので……」
根本「いやいやいや。劇中でも書いてますけど『ブスにブスって言わない』ですから」
他の芝居でも「見た目が75点のモデルに憧れるファンの女の子」の役をやったこともあったそうで
はるかぜちゃん「内面的に何か抱えてる役をふりたくなるんだと思いますね」
「2020年の目標は?」
稽古中に受験があり、大学進学が決まったはるかぜちゃん。
はるかぜちゃん「小さい頃から芸能界にいて。いろんな人が春名風花を「売ってくれようとした」んですよ。早泣き子役、とかtwitterをフックにしたりとか。でも、そのプロデュースされるという機会をことごとく自分で潰してきたんですよね。しばらくすると「これはぼくじゃない」って自分で決めて、仕事をお断りして、っていうのを繰り返して」
根本「はい」
はるかぜちゃん「女優になりたいなら、普段の個人のキャラクターをあまり出さない方がいいとかも、言われたこともありました。でも、そういうのをぶっ壊したいんですよね。「はるかぜちゃん」のイメージが強すぎたら女優としては売れない、みたいなのを。そういうのを打破するためにも大学に行って力をつけたいんです」
根本「それ、すごく良い目標だと思います。私も自分が戯曲を書いている人間なので、(作家や演出家からは)役者としては使いたくないって言われることもあるんですけど。でも、「作り手・根本宗子」とは切り離して、演者として使ってくれる人もいる。個人のイメージと結び付けられてしまいがちで敬遠されてしまう、そういう常識を変えたいから私も俳優業の方もやめていないっていうのはあるので」
はるかぜちゃん「今って、自分でプロデュースして売れていくっていう人も増え続けているから。いろんなことを言う人を黙らせるためにも、大学に行って勉強したいなって」
根本「自分を出していくっていうのがおもしろがってもらえる時代になってきてはいると思いますよね」
はるかぜちゃん「大学は自分のために行くので、自分の人生をかけてもいいっていう作品に(在学中に)出会ったらまたわからないですけど。ひとまずは『全てを壊す』という目標に向かって(笑)頑張れる年にしたいなって思います」
根本「いやぁ……すごいな。じゃあ、私も同じ目標で(笑)」
根本宗子の面談室vol.43 終了。
終演後はチェキタイム。
レポート構成:田中春香