#13.スペシャリスト

この仕事をしていてよく思うことは、家族の方の知恵と工夫はすごいなということ。

理学療法士は、環境調整や介護方法についてある程度の知識は持っている。私も長年介護保険分野で働いてきたのである程度の知識は持っているつもりだ。

しかし、未だに見たこともない福祉用具や、こんな方法もあるのかといった介護方法に出くわすこともある。

教科書で学べるものは、割と簡単な介助方法や、一般的な環境調整がほとんど。
在宅においてもちろんこの知識は有用である。だが介護者の体調や体格差、自宅環境によっては応用的な環境調整を余儀なくされるケースも少なくない。なかなか正解を教えてくれる方も少なく、福祉業者の方と悩みながら進めることもある。


病院を退院するときは介護者もまだ介護未経験。退院に備えて入院の担当者から、生活に必要な介助のことは全てアドバイスをもらい退院していく。家に帰って初めは教えてもらったとおりに介助していくが、次第にコツを掴み始め、独自のやり方に変わっていく人も多い。

例えば、一人で立位保持が難しい方に対しては、オムツを勧めることが多い。しかしまだオムツは可哀想、行けるうちはトイレで用を足してあげたいと要望があるとする。いわゆる全介助の介助指導だ。介護初心者の方にいきなり全介助のトイレ誘導を教えるのはかなり難易度が高い動作になる。
しかし少しずつ機能が低下したケースではどうだろうか?徐々に指導されたやり方が通用しなくなり、独自にやりやすいように変更を重ねていった結果、普段では思いつかない効率の良い介助方法になっていたりする。


このように長く介護を続けていれば、その人を看ることに関しては超一流のスペシャリストになる。ある意味私達は、広く浅く様々な対象の利用者がみれるジェネラリストである。

そんなスペシャリスト達の介護技術をすぐ近くで見させてもらえることはとても大きな財産になる。
プロとしてそれでは失格なのではとの声が聞こえてきそうだが、これだけは上には上がいることを身を持って体感している。

私にできることはこれらのケースを一例でも多く、こういったケースをスタッフと共有し、共通の財産にしていくこと。それが後に、思わぬところで他の利用者へ還元される可能性を秘めている。

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