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恋愛(二人の愛の物語)
相変わらず毎日つまらない仕事へ向かっていた。
あ~今日もグチグチ言われながら仕事をするのか~
そんな事を思いながら今日も職場へと向かっていた。
道すがらふとあるポスターに目がとまる。
『ラッセン展』
学生の頃から絵心はなくとも鑑賞をするのが好きだった。
仕事帰り元気なら行ってみようかな・・・元気ならね
そんな事を思いながら職場へと向かった。
始業時間は9時から
制服に着替え自分のデスクへむかう
電話の音とカタカタとパソコンの音が響き段々気が遠くなっていく
そんな時一人の訪問者が来た
こんにちは。
私は振り返り訪問者を見るとそこには細見のスーツを着た男性が立っていた。
はい。どういったご用件ですか?
そう尋ねると彼はカバンから一枚のポスターとチケットを出した。
そのポスターを見ると朝見かけたラッセン展だった。
あっ!今朝このポスター見ました。私興味があって行ってみたかったんです
普段なら警戒して自分から話しかける事などしないがこの時は違った。
あっそうだったんですね。是非見に来て下さい。
そう言いながらポスターとチケットを手渡し
それでは、お仕事中失礼致しました。
と言って去って行った。
時間にしたら数分の出来事
席に座り貰ったチケットを見ながら先ほどの彼の事を考えていた。
素敵な男性だったなぁ~
そう私はどんな人かもわからない彼に一目ぼれをしたのだ。
どうしよう・・・
今日貰ったチケットの日時を見ると今日から開催だった。
今日貰って今日行く?それとも少し時間を空けてから行く?
そんな事より重大な事があった
今日の服・・・何着てきた?
普段は仕事が終われば真直ぐ帰宅しているため注意されない程度の服で出勤している。それが突然の彼の登場で私のつまらない日常に色がついたのだ。
仕事をしながらもそんな事を考えながらの時間はとても早く会社を出るころにはアトリエに行くことを決めていた。
更衣室で帰り支度をしていた。
いつもならパッと着替えて足早に駅へと向かう
だが今日は違う。化粧を直し、服装を整える。
よし!これで大丈夫
ロッカーの小さな鏡の中の自分に気合をいれる。
お先に失礼します。
そう言い会社を出た。
アトリエは駅前のビルの6階にあり
ビルの入口にはラッセン展のポスターが飾られていた。
ふ~っと一息してからエレベーターへ乗り込む
スーッと静かな音で上がっているなか心臓がどきどきしてくる
初めてのアトリエどうしたらいいのだろ・・・
落ち着かな気持ちでいるとドアが開いた。
一歩歩きだすと受付の女性が笑顔で
いらっしゃいませ
とこちらに言いドギマギしている私に
チケットはお持ちですか?と尋ねてきた。
慌ててハイ。持ってます。と答えながらチケットを出すと
こちらに記帳をお願いします。
そう言うとどこかへ行ってしまった。
記帳、記帳・・・ここに名前っと・・・下を向き書いていると
あっ!早速来てくれたんだ。
と明るい声がした。
声のする方を見るとそこには彼が笑顔で立っていた。
あ~そうだ。この笑顔。この笑顔が見たくて後先考えずここに来たのだ。
その後は夢のような時間が流れた。
まだ人がまばらなアトリエの中で
ゆっくり絵画の説明を聞きながらあっという間に彼に恋をしてしまった。
それからはアトリエに通うのが日課になった。
憂鬱な仕事も終わればアトリエに行ける・・・いや彼に会える
それだけで満足していた。
そんな生活の中で私は欲張りになっていった。
彼ともう少し一緒にいたい。特別になりたい。
そんな思いがあふれ出してきた。
『一枚絵を買ってみない?』
ある日彼から言われた言葉
そうか!彼の力になるためなら絵の一枚くらい買わなくては
彼の特別にはなれない!
そんな考えまでしてしまうくらい私は彼に恋をしてしまった。
じゃあ、この絵買おうかな・・・
その言葉で彼が喜んでくれた。
その日を境に私は彼に近づけたと思い込んだ。
ある日そんな私の様子を今まで黙って見守っていてくれた友人がポソッと言った。
それは恋なの?
言われた瞬間私の中の感情がザワザワし始めた。
実はわかっていた。
彼にとっては私はただの客で勝手に盛り上がっているのは私だけだ
風船がはじけるように目が覚めた。
アトリエに通っている女の子は皆彼に恋をして振り向いて欲しいから絵を買う。
冷静になれば都合の良い客だ。
友人のおかけで目が覚めた。
友人の言葉がなければ私はお金を使い、どこまで行ってしまっただろうか・・・
そう思うとゾッとしてしまう。
あれからアトリエには一度も行っていない。
短かったが私は彼に恋をしていた。
それは紛れもない事実だ。
だが恋の仕方を知らない女の子の無謀な日々だった。
恋とは何だろう・・・
今でも私の宿題だ。
END
【#才の祭】
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