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小賢しいんだよ、お前。

何年も前に、付き合っていた人と別れる時

「小賢しいんだよ、お前。」


と言われたことを何年経っても覚えている。
おそらく思い当たることが多すぎて言い返せなかったからだ。



きっと彼はそんなことすっかり忘れているだろうけど、(忘れていて欲しい)わたしはずっと気にして生きている。



あの頃のわたしは相手を貶めて被害者ぶったり、己の過ちを認められず悲劇のヒロインでいたがっていた。
刺激のない優しいゆりかごのような恋愛が、どんなに幸せな事か知らなかった。嫉妬させて傷付けてみたり、急に冷めてみたり、彼の好意を利用して自分勝手に傷つけていた。自分に都合の悪いことがあればすぐに逃げた。それでも許してくれていた彼のことを、「他に好きな人が出来た」と突き放した。最初から最後まで最低だった。あたかも自分に非がないかのように口から言葉がスルスルでた。そして彼は私に言ったのだ。

「小賢しいんだよ、お前。」



別れ話をしたあの時そう言って貰えなければ、わたしは今でも自己防衛の小賢しさを振りかざして、人を平気で傷つけていただろう。


同時に彼はちゃんとわたしのことを見ていてくれていたんだなと思った。誤解も誇張もなくわたしの欠点を貫いていた。わたしは確かに愛されていた。29年の人生の中で家族以外の誰かに1番愛されていた。それは今でも覆ることは無い。


当時気づけなかったことに、何年も経ってから気付かされる。

果たして今のわたしは、何かを見落としてはいないだろうか。




最後まで読んで頂きありがとうございます。
またいつか。

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