見出し画像

【アイマスライブレポート】765×346 IDOL Coll@boration FES DAY2 "ROCK" @サイパンスーパーアリーナ

前日の"POPS"に続いてサイパンスーパーアリーナで行われた765プロダクションと346プロダクションの合同ライブ。予め出演キャストは発表されていたものの、「大規模なコラボをする」という突然の公式発表があったのは、なんとその前日。そして"POPS"のセットリストが速報されてからのSNS上の盛り上がりはご存知の通り。Cleaskyとレイジー・レイジーの名前は即座にトレンド入り、ゲリラリリースされたコラボ曲は瞬く間に配信チャート1位、と話題を攫って行ったわけだが、筆者はこのときから既に2つの意味で身震いが止まらなかった。2日目のコンセプトである"ROCK"の名の元に行われるコラボが―それも、互いに出演者の中に実力派ロック・ユニットを擁する2つのプロダクションのコラボが、壮絶なものにならないはずがないのだ。そして、1日目のおかげで彼女たちのライブには「それ以上のもの」が大衆から望まれることになっているのだ。

そして迎えたライブ当日。暗く広い会場に突如響き渡ったアカペラ、「BRAVE STAR」からライブはスタート。楽器隊の入りとともに照明が点き、"POPS"同様、センターステージを挟んで向かい合う形で作られた2つのステージの片方に現れたのは、765PRO ALL STARS(以下765AS)からの4人―天海春香、如月千早、秋月律子、四条貴音。”こんにちは!後ろの人たちもちゃんと見えてるからね!”ノルマ(?)を早々に達成した天海は、このライブのスピード感を早くも予告しているかのようだった。そして間髪入れずに放たれた「START!!」で早くも観客のボルテージはマックスに。

”負けてられないね。346プロダクションから、Sirius Chord!よろしく!(渋谷)” 一方、反対側のステージに現れたのは、最近デビューしたばかりのユニット、Sirius Chord(以下SC)の3人、渋谷凛、松永涼、白雪千夜だ。と言っても個々はやはりライブ慣れしているのか、クールな佇まいで放たれたのは「One Life」。そして数か月前にリリースされた最新曲「Drastic Melody」も披露と、惜しみなく突っ走る。このあとに待ち受ける対バンを前に、早くもメンバー間や事務所間で火花を飛ばしているようなパフォーマンスだ。

画像1

前日の"POPS"と違ったのは、このライブでは両ステージともに生のバンドセットで演奏されていたこと。如月の活動初期からの楽曲「蒼い鳥」のロックバラード・アレンジや、バンド編成では初披露の「Drastic Melody」は、恐らく二度と聴けないほどの熱量に満ちていた。いつも地に足つけて安定感あるパフォーマンスを見せている765ASの面々も、テンションは既に会場と共に最高潮。

数曲の後、MCで全員が一旦退場。”それじゃあ、ここまでも本番でしたけど、ここからが本当の本番です!(秋月)” 765ASの面々まで前座扱いする恐ろしい対決の舞台が整った瞬間だった。出演者の中で、あの4人だけがまだ登場していない―最後に全員で披露された「紅白応援V」は、後に続く2組の対決へのエールだったのだ。これを越えられるのか―ここでマックスになった筆者の不安は、数時間後には消えてなくなっていることになる。

画像2

画像3

やがて万雷の拍手の中を入場するRock the Beat(以下RtB)の2人。トレードマークの黒いギターとマイクの音の確認がてら、おもむろに木村夏樹が弾き語りで同僚の曲である「メッセージ」の冒頭をゆっくり歌い出すと、会場からは大歓声。”いいね!もう十分あったまってるな!” そして隣の多田李衣菜と視線を交わし、拳をぶつけ合うと、木村が鳴らしたイントロは「Sparkling Girl」。曲の最中、向かい合うステージにいつの間にか立っていたD/Zealとともに、挨拶代わりのソロ曲合戦が始まった。「プラリネ」の前のMCでは木村が ”さぁ、お前の番だ!かかってこいよ、ジュリア!” と相手を煽る場面も。観客が、これが単なる共演ではなく、互いの意地をぶつけ合う”対バン”であることに気付いた瞬間だろう。奇しくも、路上のロックミュージシャンからアイドルに転身したという共通項を持つ二人。こうしてロックを冠したステージで対面することの嬉しさを誰より感じてもいるからこその言葉だった。

画像4

画像5

中盤。”アタシたちの相手にリスペクトを込めて!” というジュリアの声に続いて大歓声とともに鳴らされたギターのイントロは、なんとRtBの「Jet to the Future」!この日一番のサプライズでRtBのお株を奪いつつも、リスペクトを忘れない選曲だ。ここまでステージでギターソロを弾き倒すジュリアというのもなかなか見られない光景だったが、ジュリアと背中合わせで楽しそうに声を張り上げる最上静香が何より筆者は忘れられない。

画像6


それを受けた反対側のステージ上。木村が一瞬だけ笑みを見せたかと思うと、おもむろに落ちる会場の照明。ピンスポットライトに照らされた多田が歌い出したのは、こちらもD/Zealの曲である「餞の鳥」。木村のギター1本と多田の歌だけのシンプルな、それでいて深みのあるアレンジだ。以前、本誌のインタビューで「他の人の曲を歌うって、その人が頑張って磨いてきた分も受け取らなきゃいけない」(2019年8月号)と語っていた多田だが、最上にも引けを取らない歌唱力、先程とは別人かと思うほどの表現力、そして相棒にも負けずに観客を引き込む力は十分すぎた出来。ユニット内で激しく火花を散らす「Jet to the Future」、少ない音数でそこにいる2人の存在と関係を明確にした「餞の鳥」と、新しい顔をそれぞれの曲に見出したこのシーンは圧巻だった。

画像7

画像8

”今日は純粋に、私たちの歌、私たちの曲で勝負しに来ました(最上)”、”人生で一番ロックなライブにします!(多田)"とMCで語られていたことが真実だろう。「餞の鳥」の他、最上のピアノの弾き語りで披露された「Catch my dream」、ジュリアが歌い出した瞬間に悲鳴に似た大歓声が上がった「流星群」のように、楽曲本来の力を信じて静と動を巧みに使い分けた選曲、そして前日の"POPS"で使われていたトロッコや空中ブランコといった派手な舞台装置の一切を封印して臨んだことが何よりの証拠だ。そしてRtBは発売予定もない新曲まで披露。楽器帯の重低音とともに観客にハンドクラップを煽り、RtBの空間を作り上げていく。彼女たちの新たなアンセムになる予感がした1曲だった。

"どんな時代か、どんな場所か、どんな曲か、それ以上にロックに大事なモノを賭けた最後の勝負といこう"、"最後は正真正銘、同じ1曲での勝負だ…Rock the Beatと!D/Zealと!アタシたちと!会場のみんな!誰が一番アツくなれるかの!" と、息を少し切らしながら煽る木村とジュリアに、ロックをルーツに持つアイドルであることのプライドと覚悟を感じつつ、本編ラストに披露されたのは4人で演奏される「ハーモニクス」。かつてジュリアが ”シズ(最上静香)とのぶつかり合いの曲” と評していたこの曲が、MC通りRock the Beatとのぶつかり合いになり、木村夏樹、多田李衣菜とのぶつかり合い、そして4人それぞれの音と気持ちのぶつかり合いで、"新しい歌"、"新しい音"が生まれた瞬間だ。

画像9

アンコールはこれまで使っていなかったセンターステージに出演者一同が介しての「Eternal Harmony」。"最後まで止まらずに行こうぜ!(松永)" と、ボルテージはそのまま、さっきまで火花を散らしあっていたアイドルたちが一か所に集まり、歌い踊る。そのまま最後の曲、「Twilight Sky」では会場がオレンジのサイリウム一色に染まる中、肩を組んで歌う最上と多田。そしてジュリアと木村の、終わることのないギターソロ・バトル。観客を煽る765AS、負けじと声を張り上げるSC。最後の最後まで大きくなり続ける歓声。そして拍手が鳴り止まない、誰も帰ろうとしない終幕。こんなうるさいライブいつぶりだろうか。

"アイドルがロックする" ことに偏見を持つ必要なんてどこにある?だって、ステージの上で観客とともに魂を削る彼女たちがいるじゃないか。このかつてない合同ライブに、彼女たちの真髄を見た。

ライブ終了後の告知動画では、765・346プロダクションの東名阪対バンツアーの開催も決定。今後の活動にも目が離せない。


画像10




【Set List】
1:BRAVE STAR
2:START!!
3:One Life
4:Drastic Melody
MC
5:蒼い鳥
6:Anemone Star
7:紅白応援V(765×346 ALL STARS)

8:Sparkling Girl
9:Precious Grain
10:Rockin' Emotion
MC
11:プラリネ
12:Jet to the Future(D/Zeal)
13:餞の鳥(Rock the Beat)
14:Catch my dream
MC
15:ØωØver!! -Heart Beat Version-
16:流星群
17:新曲(Rock the Beat)
MC
18:ハーモニクス(D/Zeal × Rock the Beat)

Enc1:Eternal Harmony
Enc2:Twilight Sky


(All Photos by 早坂そら)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?