VR✕アナログゲームの圧倒的可能性とは!? メタバース経済に"実業"をもたらす突破口となるか
「メタバースで生きていく! 」と言っても実際問題なかなかビジネス化は難しいソーシャルVRの世界ですが、カードゲーム・ボードゲーム・TRPGなど、アナログゲームをVR世界に"輸入"する活動を行っている一般社団法人「REARV」代表理事「とむこ」さんにインタビューを実施したところ、課題だらけのメタバース経済に小規模クリエイターが"実業"をもたらす新たな可能性を感じました。
この記事では、ソーシャルVR等のメタバースで日常生活を送るヘビーユーザーの一人である筆者、VTuber・作家のバーチャル美少女ねむが、REARVのビジネスモデル、メタバースでのビジネスが難しい現状、そして「ソーシャルVR✕アナログゲーム」の可能性について解説します。約4,300字、書き下ろしです。
アナログゲームをVR世界に"輸入"する「REARV」のビジネスモデルとは!?
カードゲーム・ボードゲーム・TRPGなど、アナログゲームをVR世界に"輸入"する活動を行っている一般社団法人「REARV」代表理事「とむこ」さんに、5月29日にVRChatで公開したばかりの、最新カードゲーム『ブラッドリコール』(原作:シエラゲームズ) をさっそく体験させてもらい、REARVのビジネスモデルについても詳しく伺いました。こちらがVRChatでのゲームプレイの様子です。
ゲームの世界感と融合したワールドで没入しやすく、刀を振る演出などVRならではのギミックが楽しく、みんなで盛り上がれそうなハイクオリティなゲームワールドでした。
REARVのビジネスモデルは、大まかに以下のようになっているそうです。まさに、現実世界のアナログゲームをVR世界に"輸入"するビジネスであると言えます。
現実世界のアナログゲームをVRChatなどソーシャルVRでプレイできるワールドを制作して、ソーシャルVR住人に無償でゲームを遊んでもらう
ワールドのコンテンツを拡張するためのクラウドファンディングを実施して、ファンになってくれた住人から資金を集める(驚くべきことに、前回「VRガンナガン」(原作:Keepdry) では1,000万円を超える支援を集めています)
ゲームの世界観から展開したVRアバターなど周辺コンテンツを販売する
最大のポイントは、これらREARVの活動はリアルのアナログゲーム会社からの出資を受けた宣伝活動「ではない」ということです。逆にコンテンツ利用料として対価をきちんとゲーム会社に支払っており、アナログゲームを活用したVRでの活動だけで独立採算として利益を出せる、まさに"実業"と呼べる構造を狙っているのだそうです。
メタバースでのビジネスが難しい現状
筆者がスイスの人類学者リュドミラ・ブレディキナと共同で実施した『ソーシャルVRライフスタイル調査2023』では、ユーザー約2,000名に「ソーシャルVRの活動での収益」について聞いてみました。
将来的にソーシャルVRの収入を主軸にして生活していきたいという意欲を持ったユーザーは34%と多かったももの、実際に収益のある人はわずか26%で金額としても10万円以上はわずか7%と、まだまだ"実業"としてのメタバース経済はこれからという実態が見られました。
※出典:ソーシャルVRライフスタイル調査2023 (Nem x Mila)
その一因としては、やはり人口の少なさにあります。近年ソーシャルVRでは急速に人口が増加しており、直近5年で人口は7倍程度に膨れ上がったと見積もられています。それでも日本人の割合は約12.9%程度で、数十万人程度の規模感と言われています。
例えば、広告ビジネスを展開するマーケットとして考えるとこれはまだまだ小さく、単純に現実世界の商品をVR世界で宣伝するようなモデルは、「メタバースに進出しました」という先進性のPRにはなっても、継続的なビジネスとしては成立しづらいのが現状です。
※出典:VRChat同時アクセス10万人突破! 5年で人口7倍に! メタバース人口統計レポート【2024年3月最新】
「ソーシャルVR✕アナログゲーム」の圧倒的可能性とは!?
このように現状まだまだソーシャルVRはユーザー数も限られていますが、対するアナログゲームも正直ニッチな趣味である感は否めません。「ソーシャルVRユーザーで、なおかつ、アナログゲームをプレイする層」と考えると市場がかなり限定されて全くビジネスにならないような気もします。この疑問を率直にとむこさんにぶつけてみたところ、意外な答えが返ってきました。
とむこさんによると、REARVが狙っているターゲット層は、そうではなくて、既存のソーシャルVRユーザーとアナログゲームユーザーを含む「全体」なのだそうです。それは、それら2つが以下のように相互補完的な関係にあるから、と言えそうです。
ソーシャルVRユーザー全体:現状のソーシャルVRはみんなで遊べるハイクオリティなゲームコンテンツが不足しているという課題がある。VRと相性のよいアナログゲームを展開することで、これまでプレイしたことのないソーシャルVRユーザー全体にアナログゲームを普及でき、コンテンツ拡張やアバター販売など、マネタイズにも繋がる(前回「VRガンナガン」で需要は実証済み)
アナログゲームユーザー全体:アナログゲームは現実世界で対戦相手を確保するのが難しいという課題がある。時空を超えて一箇所に集まることができ、プレイ相手も見つけやすいVRにゲームの場を提供することで、既存のアナログゲームユーザー全体にVRを普及できる。(実際に、REARVのワールドで対戦するために新たにVRゴーグルを買ったユーザーも多いとのこと)
今回実際にプレイした私の感想としても、小規模クリエイターでも深い"世界観"を作って展開することのできる「アナログゲーム」と、なりたい自分の姿(アバター)になって思い通りの世界観(ワールド)に没入できる「ソーシャルVR」は非常に相性がよいと感じました。
またREARVとしては、将来的には逆に、ソーシャルVR世界発のアナログゲームを独自IPとして制作し、それを現実世界でも遊べるアナログゲームとして展開することで、アナログゲームをVR世界から"輸出"する双方向のビジネスにしていくことも構想しているそうです。
単なるスキマ産業ではなく「ソーシャルVRとアナログゲーム、双方の業界を拡張する」ことを目指すREARVの前代未聞の試みは果たして、課題だらけのメタバース経済に小規模クリエイターが"実業"をもたらす突破口となるのでしょうか? REARVは更なる出資を募るために株式会社化することも検討しているそうです。今後の展開にも大きく注目していきたいと思います。
6/7 VRChat「ブラッドリコール」公開記念配信
REARVが5月29日に新作カードゲーム「ブラッドリコール」のVRChatワールドを公開したことを記念して、REARV「とむこ」さんに加えて、「ブラッドリコール」を制作したシエラゲームズ代表&原作者の「オオタユウ」さん・プロデューサー「ZUME」さんの制作スタッフ陣に、YouTube配信で徹底的にゲームへの拘りと魅力を語ってもらいました。ぜひこちらも合わせてご覧ください。私もカードゲーム「ミリしら」ですが、ゲームプレイに挑戦してみました。
VRChatで遊べる最新カードゲーム「ブラッドリコール」ワールド公開中!
VRChatワールド「ブラッドリコール」はこちらで公開されています! 無料でプレイできてしまうのが信じられないクオリティなのでぜひ。
みんなの感想
おまけ:とむこ、キンメタで泥酔
ちなみにとむこさん、テレビ朝日「金曜日のメタバース」の「ポピー横丁」特集で泥酔してた人です(笑)
バーチャル美少女ねむ
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