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VR感覚(ファントムセンス)とは何か? その定義と原理について

ソーシャルVR (メタバース) の普及に伴い、多くのVRユーザーが報告し話題となっている、"本来感じるはずのない感覚"「VR感覚(ファントムセンス)」とは一体何なのでしょうか? この記事ではその「定義」「どれくらいの人が感じているのか」「感じる感覚の種類にはどんなものがあるのか」そして現時点での「原理的な仮説」について考察します。

本格的な研究はこれからの分野ですが、脳がアバターの身体を実際の身体と誤認識する事によって起こると言われており、原理的には「クロスモーダル現象」「共感覚」など既存の認知心理学の言葉で説明できそうです。

脳がその知覚を感じているとしたら、もはやそれは「錯覚」では済まされないのではないでしょうか? VR時代に向けて、私達の脳はいったい何を感じはじめているのでしょうか?

※2024/2/13追記: 本記事を参考にHTC公式メディア「VIVERSE Blog」様で活動紹介記事を公開して頂きました!


VR感覚(ファントムセンス)の定義

本来視聴覚しか再現されないはずのVR体験中に、本来感じるはずの無いそれ以外の様々な感覚を擬似的に感じる現象全般を、俗に「VR感覚」や「ファントムセンス」と言います。

まだ本格的に研究されるのはこれからの分野で、現時点でその定義もまだはっきりと定まっているものではありません。

「VR感覚」と「ファントムセンス」の違い

「VR感覚」と「ファントムセンス」は一緒くたに同じ意味で使われることが多いですが、しいて言えば厳密には以下のような違いがあるようです。

VR感覚 (VR Sense):現在のVRは基本的に視聴覚の体験しか物理的には再現しないが、ユーザーがそれ以外の様々な感覚を擬似的に感じる現象全般のこと。「VR」(バーチャルリアリティ) に着目した表現で、ソーシャルVRユーザーが使い始めた言葉。

ファントムセンス (Phantom Sense):幻肢に着目した表現。厳密にはVRだけのことではなく、欠損部位やVRアバターなど、物理的には存在しない (="幻の") 身体部位「幻肢」(Phantom Limb) の感覚を感じる現象全般のことを指す。欠損部位の痛みを感じる「幻肢痛」(Phantom Pain) などから来た言葉。

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VR感覚を感じる割合

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VRChatなどソーシャルVRのユーザーの多くが何らかの「VR感覚」を報告しています。アンケートをとったところ、報告者の86%がなんらかの感覚を感じた経験があることがわかりました。

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※回答者の偏りはあると思いますが、実際にVRをやっていて感じる実感と近い数字だと思います → 後日より正確な大規模調査(VR国勢調査)を行いました。

どんなVR感覚があるのか

回答をみたところ、感じる感覚には個人差が大きいものの、「落下感」「温度感覚」「風圧」「触覚」など、様々な感覚を感じていることがわかりました。

人によっては、人間の身体には存在しないアバターの「しっぽ」や「猫耳」などの触覚を感じる例も報告されました。

クロスモーダル現象

赤い色(視覚)からイチゴ味(味覚)を連想する、みたいな、別々の感覚が互いに影響を及ぼし合う現象を認知心理学で「クロスモーダル現象」 と言います。
VR感覚 (ファントムセンス) はこれのVRによる視聴覚→アバターの皮膚感覚バージョンですね。

サマーレッスンで女の子の「吐息」を感じてドキドキ…とかはVRユーザーでなくても起こるので、多かれ少なかれ誰しも持っている感覚なのではないかと思っています。

共感覚(シナスタジア)

似たような現象に、共感覚(シナスタジア)というのもあります。「クロスモーダル現象」は経験によって誰にでも生じる現象に対して、「共感覚」は先天的にもっている感覚について使われることが多いようです。

実際に関連する脳の部位が反応していて、脳は本当にその感覚を感じているのですね。

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※出典:音を聴くと色が見える : 共感覚のクロスモダリティ(長田典子 関西学院大学)

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