トムネコゴ つづき

白いソーサーと小ぶりのカップが薄暗く静かな店内にぽつりと置かれる。
縁取られた金色と同じ色の持ち手。背景となった机に浮かぶカップの美しさ。

珈琲は熱すぎず、苦すぎず、後味があまりにもすっきりしていて、それなのに物足りなさはない。
店主が「いりますか」と言うので「お願いします」と言ったきり忘れられているお砂糖やミルクがあったとしても、入れることはないだろう。
余談だが、ねこはブラックで飲めない味のものにはドバドバとお砂糖とミルクを入れてしまうのだ。

そしてケーキよりも先になくなってしまう珈琲。

メニューで見た気がする「2杯目200円引き」…ん?「おかわり200円引き」…ん?…200円引きではなく200円か?いやそれはなだろう。
しかし静かな店内で「すみません」と声を出しづらいねこ。
今日は我慢だ。次はちゃんとメニューを見よう。

それと忘れてはならない、チーズケーキ。

これは…なぜ…フォークを入れるとじゅわりと音がするのだ…?
味はチーズケーキと呼ぶにはうーんうーん…
だめだ、ねこの語彙力では伝えられない。
おいしい。だから食べてくれ。じゅわりと。

そうそう、物書きの席に着いてから、物書きぶって万年筆を取り出し、ずっとこれを書いている。
さすが物書きの席。机の電気の紐をカチリと引いてから、店内は音楽と振り子時計の音とねこの手巻き時計の音だけだ。

途中雨の音が小さく聞こえて、顔上げると窓の外は雨が降っていた。
「ああ傘は持っていないな」とぼんやり考えながら、筆がするすると進む。
珈琲もするすると進んだが、おかわりは我慢しよう。
今日はこの後予定がある。

また来よう。

またこの席が空いていることを願いつつ、他の席ではどんな気分になるかも気になりつつ、万年筆をしまって電気の紐をカチリと引いたら、ねこの物書きの時間は終わり。

ごちそうさまでした。

あ、ここで何匹のねこに出会ったか数えてないや。

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