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『わたしの1ヶ月1000円ごほうび』おづまりこ著について
Amazonでエッセイと検索するとコミックエッセイばかり上位に来る。活字だけのエッセイを漠然と探せない不便さを感じながらページをめくっていたら、心ときめくタイトルを見つけた。
著者おづまりこさんは、上京後10年間派遣社員をして年収200万円生活を送っていた。30代で漫画家となっても、ゆる~い節約生活を続け、食費は月2万円。予算の余りで千円分のお買い物をしていたことから、毎月千円ごほうびを始めた。
ちょっといい調味料や高級苺あまおう、蜂蜜、バターを買って料理を楽しむ。日用雑貨や花を買って、日々の生活に潤いを与える。美術館やカラオケに行き気分転換する。童心に帰ってガチャガチャや駄菓子を大人買いしたり、自炊をさぼってフライドチキンを買ったりする。
身の丈にあった生活をしつつ、ささやかなごほうびを楽しむ生き方に「あっぱれ」と言いたい。お金の大小じゃないのよ、楽しみっていうのは。今月は、何をしようか考えるのも含めてプチイベントになっている。
そして私と食べ物の趣味が似てる。私は「あまおう」を一度も食べたことがない。スーパーで1パック1,380円を見て、1粒いくらか計算することもせず、自分で買う物ではないと悟った。こういうのは、お見舞いとかお礼に差し上げるレベルの僥倖。おづさんの「あまおう」は税抜899円で、自分で初めて買ったとある。今までは300円以下の安い苺しか買ったことがないそうだ。フライドチキンをテイクアウトするのも、私と同じ。年に3~4回くらい、そろそろケンタッキー行くかとなる。
私にとってごほうびは、すべて食べ物である。掃除が終わったら、おやつにチョコ、草むしりが終わったらジュースみたいな、休憩時間のために早く用事を片付けるニンジンの役割を果たす。
しかし、ごほうびを食欲だけに使うのは、もったいない気がした。音楽とか芸術なんかに使うのもありだなあと。数少ないが、オペラや演劇、コンサートに行ったのは10年以上昔だわ。年々遠出がおっくうになり、自粛要請を理由に上京しなくなった。もう東京に出掛ける必要性もなく、ネットでなんでも買えばいいと思っていた。おづさんの描かれた絵を見て、買物は自分の目で確認して、触って、匂いをかいで五感をフルに使ってした方がいいのではと思った。
おづさんは、1000円ごほうびを始めて数年たつが、やりたいことがたくさんあると気付いたと書いている。「夢広がる」と。