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jasu
初めてのオニ丼 / 毎週ショートショートnote
初めてそれを見たのは小学生の頃でした。
それは大人の拳ほどの大きさで、黒っぽく濡れて光っていました。ボウルに山積みにされゆっくりと蠢くそれを母は一つ掴むと、大きな丸い目のような部分に包丁を当てガツンと真っ二つにしたのです。
「食べてみる?」
目の前に差し出されたそれの中身はドロリとして鮮やかなオレンジ色でした。近くで見ると細かな粒々があり、舌みたいだと思いました。
黒い体に大きな一つ目。中にはオレンジ色の舌が何枚も。
怖くて首を振る私に母は言いました。
「子供には毒だから。」
「それで今まで食べた事が無いの?」
「うん。二十歳過ぎたらって思ってたんだけど、十八から成人になったでしょ?何歳になったら毒じゃないの?」
友人たちは笑い出した。
「まさか…みんな食べたことあるの?」
友人たちは涙目になって笑い続ける。
「あるよ!じゃあさ、今度の旅行は海にしよう。新鮮で美味しい丼をみんなで食べようよ。」
十八歳にして初めて食べたウニ丼は鬼美味しかった。
ショートショートではなくほぼ実話という反則。
ウニの黒いトゲトゲの殻もオレンジ色の身もガツンと真っ二つにする母も幼心に怖かったんです。
母は好物だったから「子供には毒」と言ったんだと思います。ある意味『鬼』です。
もう大人なので今はウニで日本酒飲めます。
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