おふたりさま [二人用AI]
「何か見る?」
店内のソファで待っていると彼がタブレットを取り出した。
「昨日の写真をアルバムにしようかな。」
「もう出来てるよ。」
昨日は親友のパーティーだった。抜け駆け無しねって言ってたのに、彼女は理想通りの彼を見つけて結婚するのだ。画面には笑顔で祝福する私が次々と映し出された。
「もう、違うよ。私のアルバムになっちゃってるよ。」
「ごめん、君ばかり見てたから。」
彼は少し膨らませた私の頬をつついて笑う。優しい笑顔。私の理想の顔立ち。パーティーで見栄を張りたくてレンタルした『今日から2人!AI彼氏』の返却日だ。
「お買上げも出来ますよ。」
見透かすように店員が言う。
「だけど、結婚は出来ないし…」
「結婚式なら出来ますし、食事をしない以外はほぼ人間と同じですから、誰にも気付かれませんよ。」
「でも…」
AI彼氏が私の手を取った。
「このまま一緒に暮らそう。」
「…はい。」
契約書に捺印しながら、ふと考える。昨日、友人の彼も何も食べていなかったな。
今週も田原かにさんの毎週ショートショートに勝手に参加です。「二人用」を「おひとりさまが二人になる用」と解釈してみました。
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