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Photo by
sayakamori
友情の総重量 / 毎週ショートショートnote
不幸は突然やってくる。
「どうした?お弁当忘れた?」
頷くと、モッチが売店を指差した。
「ダメ。現金しか使えないって。」
「まじか。」
自然研修で来た山には小さな売店とトイレのみ。周囲には松林しかない。
「松茸も無さそうだし、もう餓死だ。」
「うーん…待ってな。私のお弁当食べんなよ。」
モッチは自分のお弁当の蓋を持って立ち上がると大声を上げながら走りだした。
「みんなー、少しづつお弁当分けてー!」
「人の弁当まで食う気かよ。」
「モッチ食いしん坊だからなぁ。」
「うるさいな、唐揚げ一個連行だ!」
みんなに色々言われながらモッチは戻ってきた。
「さ、一緒に食べよ。」
お弁当の蓋には連行された唐揚げ一個と山盛りのご飯。
「ご飯多いなぁ。」
「友情の総重量に文句言わないの。私の卵焼きもあげるから。」
「ありがとモッチ。」
水筒を出すとリュックの底からおにぎりが二つ。
「あったー!けど、ご飯の総重量すごっ!」
おかずは景色と空気と友情だ。
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