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_kei_
針ほどの月明かりー23ー
みかんゼリーは飛び跳ねるうちに僕たちの影を飲み込んで、広げて、辺りを濃い青に変えていく。パチパチと音を立てて電灯がまばたきした。真白の手が冷たくなってきたので上着を着ることにした。「上着はね、寒くなる前に着るの。体が冷えてから着ても暖かくなるまで時間がかかって風邪ひいちゃうよ。」ってママが言ってた。ママはどこかでちゃんと上着を着てるかな。小さな公園のベンチにランドセルをおろして、真白の鞄も置く。ランドセルからピンク色の上着を出して真白に着せて、また鞄をかける。僕の水色の上着も出して着る。上着はママの匂いじゃなくてドーナツの甘い匂いがした。ベンチに座ってもう一個ドーナツを食べようかな…やっぱりもう少し歩いてからにしよう。クラーケンに見つからない場所まで逃げなくちゃ。ランドセルを背負うと通りの向こうから大きな声がした。
「おい。」
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