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super_acacia155
書庫冷凍 / 毎週ショートショートnote
書庫冷凍されて一週間。
一冊の本も読めず、困り果てた私は氷の王に会いにきた。
冷え切った氷の城で鼻を啜りながら待つと「何の用だ!」と声だけが響いた。
「書庫を解凍して。本が読めないでしょ。」
「本など読めなくとも困るまい。」
書庫には読むつもりで山積みになった本が沢山ある。つい忙しくて後回しになっただけで、どんなに読みたいのかを熱弁する。
「そんなに、面白いのか?」
同じ作家の前作について語り出すと、奥の部屋から少しづつ氷の王が顔を出した。
なんてこった。私好みのイケメンだ。
身を乗り出し目を閉じて聞く王がすぐ目の前まで近づいてきた。
「あの、良がっだら、続ぎを一緒に読みまぜんが。」
氷の王は目を開けて美しい瞳で私を見た。
「文字が読めず、書庫を凍らせたのだ。」
「私が読んで差じ上げまず。」
氷の王は眉間に皺を寄せた。
「書庫の氷は解いてやろう。しかし読んでもらうのは他の者に頼む。」
「え…何故でずが?」
「すまぬ。鼻を垂らした娘は好かぬ。」
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