草食系男子に教えられたこと / 毎週ショートショートnote

猫になった。
昨日飲んだ治験薬の副作用だと文句を言いに外に出たけれど「ニャー」しか言えない。
とりあえず庭の草の上で丸くなっていると、我が家の庭を縄張りにしている白猫がやってきて私を見ながら草を齧った。
「見かけない奴だにゃ。」
どうやら猫語は分かるらしい。
「ここは俺の庭にゃ。」
「私、ここの家の猫だもん。」
白猫は草を齧りながら私の匂いをクンクン嗅いで、ふっと笑った。
「嘘だにゃ。」
嘘ではない。ここは私の家だ。
「ここの家の人はサービスで少しだけ撫でさせてやるとオヤツくれるのにゃ。だけど亡くなった可愛い猫が忘れられないから飼わないのにゃ。」
たまに少しだけ触らせてくれるあれ、サービスだったのか。
「本当にゃ。」
白猫は草を齧りながら笑う。
「可愛い子猫でもないのに。絶対に嘘にゃ。」
微妙な年齢を猫にまで指摘されるなんて。文句を言ってやろうと耳を伏せて白猫を睨むと白猫は黙って下を向いた。
「…うけっ。」
出たのは謝罪…ではなく毛玉だった。

ぎりぎり猫の日です。あっ…0時回っちゃった。

#毎週ショートショートnote
#草食系男子に教えられたこと

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箔玖恵
え!?サポートですか?いただけたなら家を建てたいです。