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半笑いのポッキーゲーム / 毎週ショートショートnote

「お願い!」
彼女がポッキーを片手に頭を下げる。
コーヒーの氷が溶けてカランと鳴った。
「ポッキーゲームってやつ、やってみたいの。」
「いい加減別れてくれよ。ゲームなんか他の奴に頼めって。」
隣の男が嬉しそうに席を移ってきた。
「じゃあさ、俺がやってあげるよ。」
「彼とやりたいの。やってくれたら別れてあげるから。お願い。」
彼女、いや元カノがウインクしながら半笑いで頼んでくる。正直言ってかなり可愛い。だから隣の男も引き下がらない。
「諦めなって。ね、彼女?」
パクっとポッキーをかじる。
「うっ…。」
予想通り、隣の男は口から泡を吹いて倒れた。水を持った店員が悲鳴をあげる。
「大丈夫、ポッキーまだあるから。」
「やらないよ。」
「私の為なら死ねるって言ったじゃない。」
「もう別れたい女の為には死ねない。君のそういう所が無理なんだ。」
床に倒れた男が死んだら別れられるだろうか…。外の強い日差しを見ながら僕は救急車を呼ぶのを躊躇っていた。


#半笑いのポッキーゲーム
#毎週ショートショートnote

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箔玖恵
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