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Photo by
shinsukesugie
かもしれない弁天 / 毎週ショートショートnote
「ちょっと待って。」
振り向くと川沿いに濡れた髪の女が一人立っている。
「で、出た!」
女は走り寄ってきた。
「幽霊じゃないから逃げないで。恵比寿が大物釣りすぎて船が転覆したの。」
ウィンクのつもりか両眼を瞑る。
「川まで流されちゃって困ってるの。皆んなと合流したら返すから電車賃貸してくれない?」
「嫌です。」
「恵比寿の釣った鯛もつけるから。」
「魚嫌いなんで。って言うか寸借詐欺でしょ?」
「すんしゃく?何それ。知らないけど困ってる神様を助けてくれたっていいじゃない。いつも願い事聞いてあげてるんだからさ。」
船から落ちたと言うが髪しか濡れていない女はポケットから丸い橙色の物を出して見せた。
「私、弁天なのよ。ほら。」
「弁天様が持ってるのは楽器の琵琶。果物じゃないよ。」
私は無視して歩き出した。
少し先には男が立っていた。
「大黒天だが船から落ちてー」
「かもしれない弁天にも会いましたよ。あと大黒様はハンマーじゃなくて打出の小槌ね。」
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