告白雨雲 / 毎週ショートショートnote

庭の小さな犬小屋に雨雲が住みついた。
赤い三角屋根の犬小屋はママが小さい頃に飼っていたロクの物だ。昔は犬を外で飼っていたらしい。ロクはいないのにもう何十年もそこにある。
「捨てないの？」
屋根のペンキを塗り直しているママに聞いた。
「いつかロクが帰ってくるかも知れないでしょ。」
子供だったママがある日家に帰るとロクは首輪を抜けていなくなっていたそうだ。犬小屋を大切にしているママに、もうきっと死んでるよ、なんてとても言えなかった。

その大事な犬小屋に雨雲が住み着いた。
おかげで庭の隅はいつも濡れている。
「出てってくれよ。」
雨雲はぷぅっと少し膨れた。
「何してるの。」
雨雲を見て固まるママ。
「…ロク！」
雨雲はピューッとママの所へ飛んでいった。
「やっと生まれ変わって帰ってきたのね！会いたかった！」
雨雲は嬉しそうに尻尾？を振った。

僕の家では犬小屋に雨雲を飼っている。
これは誰にも告白しない家だけの秘密だ。

『本作品はamazonkindleで出版される410字

の毎週ショートショート〜一周年記念〜 へ掲載

される事についてたらはかにさんと合意済です」

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