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無人島生活福袋 / 毎週ショートショートnote

袋を開けて覗いてみると小さな島が見えた。
潮の匂いを嗅ぎながら両手を伸ばして福袋の中へ滑り込む。
島の真ん中には椰子の木が一本。
砂浜を蟹が歩く。
見渡す限り海しかない。
上空を白い鳥が飛んでいく。
本当にこんな無人島に来てしまったら絶望しそうなほど何もない。
のんびり出来そうだと流木に腰を下ろす。
静かだ。
ゆっくり読書でも…本が無いな。
無人島らしく釣りでも…竿も釣り糸も餌も無い。
暇だ。
暇すぎる。
三十分も経たないうちに飽きてきて、両手を空へ伸ばすと説明書通り指先が袋の縁を触った。
このまま指先の紙袋を掴んでジャンプすると元に戻れる。
手探りで福袋を掴もうとした時、強い痛みが走り思わず手を引っ込めた。
指先に切り傷が現れて赤く血が滲んでいる。
無人島に大きな鳴き声が響いた。
紙袋を攻撃する音と共に上空には時折り白い前足が見える。
飼い猫のカツオだ。
カツオが飽きるか眠るまで帰れそうにない。
福袋が破れないよう祈りながら無人島生活は始まった。


紙袋で猫と遊ぶのは中々スリルあります。

#毎週ショートショートnote
#無人島生活福袋

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箔玖恵
え!?サポートですか?いただけたなら家を建てたいです。