ヘルプ商店街 / 毎週ショートショートnote
夜中だと言うのにヘルプ商店街は魚屋も肉屋も玩具店もとても賑わっていた。
「おや、見かけない顔だねぇ。」
黒いワンピースを着た背の高い人に声をかけられた。
「散歩してたらここに。」
「それは素敵なご縁だこと。」
白いワンピースを着た背の高い人が言った。
二人とも頭から顔にレースをかけているけれど左右色違いの瞳が美しい。
「せっかくだから、おひとつ。」
白い人が宝石箱みたいな鞄を開く。中にはたくさんの毛糸玉が詰まっていた。
「どうぞ好きなの選んで。」
「私、編み物しないし…」
「両手にふんわり持つの。暖かいわよ。」
オレンジみたいな明るい茶色を選んで持つと、ほんわり暖かい。ふかふか、ふんわり。もぞもぞ。
「動いた!?」
顔を上げると誰もいない。商店街もない。
「にゃあ。」
両手の中で赤茶色の子猫が鳴いた。
満月の夜、一番星を目印に歩いていくと時々たどり着くというヘルプ商店街。
ただし、猫好きの方に限るようです。
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