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lively_hebe767
春ギター / 毎週ショートショートnote
缶ビールを一口。
窓辺に立てかけたギターと夜の花見。
白い月明かりに女の子らしいモノが何も無い部屋が浮かぶ。家具も服も黒ばっかで、可愛らしい色は外の桜くらいだ。色気の無い部屋が私らしくて少し笑った。
「夜ってさ、寂しいよね。」
真夜中にかけた電話は、私なりに誘い文句のつもりだったから、アイツが急いで来てくれてすごく嬉しかった。
「俺の古いやつだけど、やるよ。じゃあな。」
ギターを置いてサッと帰るアイツ。
本当はわかってるんだ。
アイツには彼女がいる。女の子らしいフワフワした子。
缶ビールを窓枠に置いてギターを持ってみる。
人恋しい春の夜にギター一本。
一夜でいいから一緒にいて欲しかったんだよ?
ギターはもちろん答えない。
本当はわかってるんだ。
アイツは友達の枠から絶対に出ない。
やっと咲いた桜がはらはら散っても。
春にギターなんか貰うもんじゃないね。
答えないギターと夜桜。
大丈夫。すぐに春は終わるから。
白い月が沈んだら、また友達に戻るだけ。
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