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Photo by
yuruyuura
ポポパポペピアノ / 毎週ショートショートnote
小さな手が白い鍵盤を叩く。
みぃちゃんはピアノを習い始めてからすっかり僕と遊ばなくなった。
僕を弾きながら「わんわん、にゃーにゃ。」と言っていた声は「ド、ミ、ソ…」に変わった。
玩具箱に斜めに突っ込まれたまま少しづつ埃が溜まっていく僕の姿が黒く光るピアノに映る。何度も間違えてはやり直す、たどたどしい旋律を聴いていたけれど、そろそろ僕の寿命は尽きるらしい。たくさん遊んでくれてありがとう。さようなら、みぃちゃん…
目を開けると小さなみぃちゃんが笑っていた。
力尽きた夢を見ていたのだろうか。
「よし、電池入れたから遊べるよ。ユウ弾いてごらん。」
声のする方を見ると…誰だろう。
「ママこのオノマトペピアノ大好きだったんだ。」
そうか、みぃちゃん大人になったんだ。じゃあこの子はみぃちゃんの子かな。そっくりだ。
「ポポパポペピアノ!」
小さな手が僕を弾く。その手に合わせて僕がワンワンと音を出す。
今日から僕はポポパポペピアノだ。
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