夜光おみくじ / 毎週ショートショートnote
揺らぐ灯りを頼りに開け放たれた豪華な扉へと向かう。客船で闇夜のパーティーなんて場違いな気がして落ち着かない。彼の少し長いスーツの袖をきゅっと掴んだ。
「何だか怖い。」
彼は優しく笑う。
「闇夜って言っても怖いことなんか無いよ。参加者の目的は夜光おみくじなんだ。」
「夜光おみくじ?」
ゆっくりと階段を登ると街の灯りが遠い。
空には満天の星。
彼について夜空を見ながら甲板を進む。
「海を見て。」
暗い夜の海で船が作り出す波が青く光っている。
「綺麗。海が光るの?」
「夜光虫だよ。刺激を与えると光るんだ。」
時々ドボンと音がして歓声が上がる。
「結婚しよう。」
私の手に何かを乗せながら彼が言った。
「OKだったら海に投げて、二人の未来を占うんだ。」
海に投げるなんて結婚指輪じゃないの?
闇の中で掌が…なんか…もぞもぞと蠢く…
「イソメだよ。」
「いやーっ!」
ドボン。
◇ ◇ ◇
「よくそれで結婚したよね。」
呆れる私に祖母は笑っている。
写真立ての祖父も。
⚠️イソメは釣りに使う魚の活き餌です。ミミズっぽいボディにエイリアンみたいな口元で私は素手で触れません。苦手な方は調べたりしないでね。
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