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針ほどの月明かりー25ー

弾かれたように飛び上がる。真白もビクリと肩を動かしただけで息も止まったみたいに動かなくなった。通りの向こうをじっと見る。

やっぱりクラーケンだ。

少し遠くてもその声で怒っているのはわかる。怒っているのに顔はニヤニヤ笑っているんだ。いつもそうだ。僕を殴る時も目は怒っているのに口はニヤニヤ笑っているんだ。きっとまた家に連れ戻される。殴られて狭くて暗い押入れに閉じ込められる。それとも今度は本当に殺されてしまうかも知れない。そう思ったけれど僕も真白と同じで動けなかった。恐怖は体を固くするんだ。

え!?サポートですか?いただけたなら家を建てたいです。